こんなに悪に魅了されるなんて
ジョーカー
ほのぼの感想&解説
あっホアキン・フェニックスが2017年に主演していた『ビューティフル・デイ』も同じくそう謳われていたなぁ。
まさに…
“どん底で終わるより、一夜の王でありたい”
『キング・オブ・コメディ』はチャップリンの『ライムライト』(1952)にも通ずる。
過去に名声を得たが、現在は落ちぶれてしまった道化師の最後の生き様を描いた作品。
悲劇の中にも喜劇が見られる作品。
人を楽します人がその舞台裏で明るい人だとは限りませんもんね。
『パッチ・アダムス』(1998)で道化師を演じていたロビン・ウィリアムズが、
『バットマン』(1989)と『ダークナイト』(2008)のジョーカー役に立候補していたことを考えるとなんだか複雑な感情になる。
チャップリンは『モダンタイムス』(1936)以降、共産主義の危険人物と見なされアメリカ政府の赤狩りの対象となった。
そして『ライムライト』がアメリカでの最後の作品となり、彼はアメリカを追放されイギリスに戻らざる終えなくなった。
『ジョーカー』では『モダンタイムス』が上映されていたが、この作品はサイレントで彼のコミカルな動きだけで笑いを取る。
いつ見ても爆笑してしまう私も大好きな作品。
しかしチャップリンはトーキー映画『独裁者』(1940)の最後の演説で映画を超えて自身の考えを、いわゆる政治的発言を行った。
非情な現実に訴えかけた。
チャップリンの他にもサイレント映画のスター、バスター・キートン、ハロルド・ロイドらは言葉を介さず行動だけで笑いを生みだせることを証明した。
言葉というのは複雑で賛同だけでなく、批判も受ける。
言葉は人を惹きつけることもできるし、突き離すこともでき、恨みを買うこともある。
劇中では、富裕層が声の聞こえないサイレント映画『モダンタイムス』を見て優雅に笑っている。
本作はチャップリンが資本主義に反対し、技術の機械化に疑問を投げかけた作品であることを忘れて、または知らずに鑑賞しているのも皮肉だ。
とは思ったけれど、それを知っていてチャップリンを笑っているのか!
裏の裏ってやつ!
憎たらしい富裕層め!
純粋に映画を楽しんでいたらごめんなさーい!
ピエロは喋らずに滑稽な動きで笑いを取る。
アーサーはそんなピエロからマレーのショーで現実世界への不平を述べて、銃をぶっ放し危険人物になる。
まさにチャップリンのよう。
劇中のチャップリンは機械工場でのボルト回しという単純作業のせいで気が狂ってしまう。
資本主義は企業同士の競合を生み、商品の過剰生産、そして過剰消費社会を作り出す。
なのでこの劇場ではロメロの『ゾンビ』(1978)が上映されていても面白かった。
ショッピングモールに大量に集まっちゃったゾンビを描いた作品ですね。
ゾンビになってもショッピングモールに来ちゃうんですよ。お買い物上手ですね。
まぁチャップリン抜きでこの映画のジョーカーのキャラクターは作れなかったでしょう。
個人的にトウモロコシ歯磨きの場面がお気に入り(笑)
よく昔の映画で名作と言われるものを見て、なんでこれが名作?と疑問に思う作品もあるけれど、チャップリンの作品は全て面白い。
遠目で見れば喜劇の彼の映画も、身近で見れば悲劇になる。
アーサーも近くで見ると泣いてるんですよ。(鏡で顔を見るシーンにてアイラインメイクが落ちて涙のように流れている)
人間に置き換えると、人間同士って近くで接してこそ良し悪しが分かり合えるんですね。
噂や人から聞いた話、見た目で判断してはならない。
そして人には優しく接する。
そうでなければジョーカーのような冷酷な人間が生まれてしまう。
生まれるっていっても生まれた時点で悪の要素を持つ人間なんかいない。
ダミアンは別として。
冷酷な社会がジョーカーという悪の化身を創り上げてしまったのだ。
デマか真実か分からないメディアに翻弄される今の世界は本当に気をつけて情報収集をしなければいけない。
富裕層とは逆に外では声を上げて貧困層による暴動が起きている。
ジョーカーの言葉と行動により市民の怒りが頂点に達してしまった。
富裕層にとっては他人の声などどうでもいいのだ。
しかし抑えようとすれば反発を生む。
香港で10月5日に制定された覆面禁止法がいい例だ。
素顔をさらせば捕まりやすくなるのは明らか。
これに対し香港市民は今まで通りマスクをしてデモに参加。
6日には暴動が勃発してから最大規模の数万人での行進が起こった。
今の香港がゴッサムシティに見えて仕方ない。
去年は香港にも行ったし、香港映画も大好きなので早くおさまっていただきたい。
非常に危険な方向に突き進んでしまっている。
終盤のゴッサムシティでの状況は、今の時代は声を潜めて生きる必要はない、個人個人の考えを率直に述べて、最低限の自分たちの自由と権利を保障するため行動すべきだと現実世界の我々に対して扇動しているかのようにも感じられた。
ジョーカーがトークショーに出演した際に、完全にジョーカーに心を支配されていた私は彼を支持していた。
それはヴェルタースオリジナルで私は4歳でした。
その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーを貰える私は
きっと特別な存在なのだと感じました 。
今では私がおじいさん、孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら、彼もまた特別な存在だからです。”
明日自慢できるトリビア
魅惑の深海コーナー
よく『IT』のペニーワイズの元になった人物と言われることが多いが、原作者のスティーヴン・キングがそのことについて言及したことはないが、やはり重ね合わせて考えてしまう。
ただ劇中のペニーワイズよりもジョン・ゲイシーの方が断然凶悪であることは間違いない。
ジョン・ゲイシーはイリノイ州クック郡で33人もの若者男性を殺害したアメリカ人シリアルキラーであり強姦者である。
彼は29人の遺体を自宅の床下に埋め、他の4人はデイ・プレインズ川の近くに破棄していた。
彼はピエロのメイクと恰好をして子供たちのパーティーに出向く、『Jolly Joker』というクラブ会員としてシカゴエリアを担当していた。
“ポゴ”という名前でピエロ活動を行っており、そのため事件後は“キラークラウン”としてよく語られている。
1942年3月17日イリノイ州シカゴにジョン・ウェイン・ゲイシーは誕生した。
名前の由来は父親が強くたくましい男になるように、西部劇に多く出演した伝説のハリウッドスター“ジョン・ウェイン”から引用し名付けた。
ゲイシーは子供時代に父親から虐待を受けていた。
そして自身のホモセクシャリティについて悩んでいた。
1964年に22歳でマリリンという女性と結婚。
1968年、26歳の時に青年会議所会員の息子である15歳のドナルド・ヴァリューズ少年への性的虐待の罪で逮捕され服役、そして離婚。
逮捕以前には、就職していた大手靴販売店でエリアマネージャーに昇進したり、加入していた青年会議所でも優秀な成績を残し第一部長に就任、そして妻の父親が所有するKFCの3店舗のマネージャーを兼任するなど躍進ぶりもあり、刑務所内でも模範囚となり10年の懲役刑を受けたにも関わらず、1970年の夏には出所した。
しかしその半年後、再び少年に対する性的暴行容疑で逮捕される。
2人の少年が彼のレイプ容疑を告発したが、彼らが裁判に出廷しなかったためゲイシーは不起訴になり、1970年代半ばまでに彼の殺戮が繰り返されることになる。
釈放後は軽食堂でコックをして稼いだ。
その後、建築業に目をつけビジネスを開始。
そしてキャロルという女性と結婚し、彼女の連れ子2人と暮らした。
休みの日には“ポゴ”に扮して福祉施設を訪れボランティア活動をしていた。
さらに地元の民主党党員になり、パーティー会場では当時の大統領夫人ロザリン・カーターと握手している写真も残されている。
そして1978年12月11日、15歳のロバート・ピーストが行方不明になり警察が調査。
母親が彼を最後に目撃したのは彼がアルバイトしていたドラッグストアだった。
息子を迎えにきたが、ゲイシーが経営している建築請負業者のところに彼から誘いがあり、これから話しがあるため向かってしまったという。
10日後、警察はイリノイ州ノースウッドパークにあるゲイシーの家を捜索し、殺人などの犯罪を含む多くの証拠を発見した。
彼の最初の殺人は1972年1月2日、16歳のティモシー・マッコイ。
家に誘い込み殺したという。
彼の家の床下から発見された遺体のうち、8人は身元が分からないほどに腐敗していた。
1978年12月に逮捕され、1980年5月12日の裁判では21回の終身刑と2回の死刑を宣告された。
そして1994年5月10日、薬物注射による死刑が執行された。
彼が獄中で描いた絵は現在高値で取引されている。
ジョニー・デップがその一つを所有していることは有名である。
ワシントンDCにある『Crime Museum』には、ゲイシーの“ポゴ”の衣装やペイントセットが展示されている。