映画紀行
NJ
チンパンジーが家族崩壊を救います
マックス、モン・アムール
原題
Max, Mon Amour
公開
1986年
製作国
フランス
監督
大島渚
『戦場のメリークリスマス』(1983)
出演
シャーロット・ランプリング
『愛の嵐』(1974)
『さざなみ』(2015)
アンソニー・ヒギンズ
アンソニー・ヒギンズ
『インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
脚本
大島渚
ジャン=クロード・カリエール
ジャン=クロード・カリエール
編集
エレーヌ・プレミアニコフ
音楽
ミシェル・ポルタル
撮影
ラウール・クタール
『気狂いピエロ』(1965)
チンパンジーと女性の恋話。
ほのぼの感想&解説
フランスのイギリス大使館で働く旦那ピーターが、妻マーガレットの浮気を疑って探偵に調査を依頼。
何やら妻が夫に内緒で部屋を借りているらしい。
そこで思い切ってその部屋に侵入した夫。
そこで目にしたのはベッドで横たわる妻と布団の中にいる誰か。
怒らないから出てきなさいとピーターが詰め寄る。
出てきたのはまさかのチンパンジー!
マックスっていう名前らしい。
妻が裸なんですけど、性行為をしたかどうかは最後まではぐらかせるので結局わからないんですよね。
妻を演じるのはシャーロット・ランプリング。
彼女の代表作の一つに『愛の嵐』(1974)という映画があります。
収容所に入れられたユダヤ人の女性がナチスの将校に性的虐待をされ、終戦後に将校は正体を隠して生き、女性は元の生活に戻ることができたのですが、なんと偶然にも再会してしまう。
ここからが問題作で、二人は愛を深めてしまうのです。
当時かなりの物議を醸し、当然ながらユダヤ人からは非難殺到。
そんな奇妙な愛をしているランプリングですが、この将校の名前もなんとマックス。
チンパンジーにもマックスって名づけるなんて。
異常な愛。
そんなマーガレットの夫のピーターも、チンパンジーと妻との営みに興味が出てきちゃう面白い展開に。
さらにこの夫妻、複雑で夫は夫で不倫相手がいるんです。
それは妻も知っている。
この家庭は問題ありまくり!
何故ならピーターとマーガレットの二人の間には幼い息子がいるのだから。
お互いさまなので夫もあまり口出しできず、マックスを家に招き入れるわけです。
金持ちなのでチンパンジー専用の檻のついた部屋まで作ってあげる。
まぁただ興味本位から監視したいだけ。
息子もチンパンジーと戯れたり、食事もみんなで一緒に摂る。
チンパンジーとマーガレットとの愛情の交わし方ですが、具体的な行為が見れる場面はそれほど多くはない。
指を加えさせたり…マックス可愛い。
キスもするわよ。いやーん。
食事会にも参加。
チンパンジーとの営みが気になりすぎる夫に対して、「そんなに気になるなら部屋にのぞき穴あるからそこから見れば?」と妻が言い放つ。
覗くも行為には及ばない。
ピーターもこのおかしな状況をまんまと受け入れているわけではなく、やはり妻がイカれたと感じており、不倫相手や医者に相談する。
不倫相手に相談するなんてここも謎だ。
この映画色々常識から外れていく。
そういうところが好き。
やはりピーターは一度チンパンジーと人間との性行為が見たい。
そこで街で拾った娼婦を家に連れ込み、チンパンジーの館へ誘う。
娼婦は金の為ならと迷わず裸になり、マックスに近づく。
しかしマーガレット以外は受け入れないマックス。
チンパンジーは嘘をつかない。
欲望に負けない。
愛するのはマーガレットのみ。
悔しいピーター。
妻と議論の末、マックスを施設に預けることに一時は同意。
しかし一向に預ける気のない振る舞いに憤りがピークになった夫。
なんと銃を持って妻と息子がともに食事しているチンパンジーの館に入り込んできた。
結果マックスに銃を奪い取られる。
『猿の惑星』を見てるかのような状況に。
そのうち「No!!!!!!」って叫んだらどうしましょう。
マーガレットの説得もあり、危機的状況を回避。
その後、マーガレットは母親が体調を崩したため少しの間実家に帰ることに。
銃事件以降、やりすぎたと反省したピーターはマックスと何とか仲良くなろうとする。
マーガレットがいなくなってから元気がなくなるマックス。
可愛い。
そこでフルーツを買ってマックスの機嫌を取ろうとするピーター。
それでも釣れない。
妻の声を聴かせるしかないと電話をするピーター。
なんじゃこりゃ?と困惑するマックスに対して、耳の側に電話を置いてあげる優しいピーター。
寂しそうなマックスを見て、もう妻の実家に連れて行こうと決心。
そしてまずは妻の母が入院する病院にマックスを連れて行き診察してもらう。
正常なチンパンジーという判断が下る。
ピーターは元気がなくて自分で歩かないマックスを肩車して運んであげるんです。
可愛すぎ。うなだれてる表情に萌える。
マーガレットと合流して元気を取り戻すマックス。
なんだかんだでみんなで家に帰ろうってなったわけですが、なんでかは忘れましたがマックスが逃げ出しちゃうんですね。
残念そうにしながら車を走らせ3人で帰路に。
その道中で上からマックスが降ってきたんですね。
それに気付かず、対向車や並走者が3人の乗る車を指さして笑うわけです。
なんなんだよと憤るピーター。
みんな上を見てることに気付いたマーガレットは窓から顔を出し上を覗くとそこにはマックスがいるわけです。
ちょこんと乗っかっていて可愛い。
本当可愛いなぁ。
3人とも笑顔に。
なにこの展開。
家に帰ってきた3人とチンパンジー。
いろいろ問題を抱える夫妻が息子とチンパンジーと一緒に食事を摂りながら幕を下ろす。
チンパンジーが家庭崩壊を救った。
最後まで見て感じたことは、動物は嘘をつかないなぁと。
ありのままの感情で人と接してくれる。
嘘をつくのは人間だけ。
やっかいな造りだ。
だからこそマーガレットはチンパンジーに対して愛情が芽生えたのだろう。
大人しいお猿さん好きにはたまらない映画でした。
明日自慢できるトリビア
劇中のチンパンジーは本物と特殊メイクを施した人間が演じている。
あまりにもリアルで本物との区別がつかない特殊メイクは、猿メイクを得意とするリック・ベイカーが担当。
彼といえば『狼男アメリカン』(1981)の伝説の特殊メイクで有名。
この作品でアカデミーメイクアップ賞を受賞した。
また、これはこの年に創設された部門であるため、彼の貢献度とクォリティの高さを表している。
これまで、『ハリーとヘンダスン一家』(1987)、『エド・ウッド』(1994)、『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』(1996)、『メン・イン・ブラック』(1997)、『グリンチ』(2000)、『ウルフマン』(2010)で受賞している特殊メイク大御所だ。
さらにマイケル・ジャクソンの『スリラー』(1983)のミュージック・ビデオの特殊メイクも担当。
2001年公開の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』でも猿のメイクを担当している。
オリジナルの『猿の惑星』シリーズで納得のいかなかった猿メイクに猿らしさを加えてリアルに表現した。
魅惑の深海コーナー
異種間愛を描いた映画はたくさんありますね。
巨大ゴリラの女性へのやや一方的な愛『キング・コング』
変身したとはいえ獣姿の男と惚れた女性『美女と野獣』
ハエになった彼氏と人間の彼女『ザ・フライ』(1986)
ハサミ男と美少女『シザーハンズ』(1990)
人形に恋した青年『ラースと、その彼女』(2007)
ヴァンパイアと内気な少年『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)
異星人と人間『アバター』(2009)
ゾンビと女性『ウォーム・ボディーズ』(2013)
AIに恋した男『her/世界でひとつの彼女』(2013)
狼に惚れた女性『ワイルド わたしの中の獣』(2016)
魚人と女性『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)
一言教訓
時には退化することも進化である。