ほのぼの感想&解説
とあるテレビ局で放送される映画番組。
今宵の映画は『リターン・オブ・ザ・キラートマト』。
あの多数の犠牲者を出したトマト大戦から数年後、アメリカ国内ではトマトの存在はタブーとなっていた。
しかし八百屋さんではトマトの密売が行われていた。
まるで禁酒法時代ではないか。
しかもその取引の時に“ゴッドファーザーのテーマ”が流れる。
ピザ屋ではフルーツや魚、そしてチョコレートを使ったピザが流行していた。
そこで働くのは前作で大活躍?した兵士。
店には前作での自身の活躍が載った新聞の切り抜きを飾って誇らしげである。
兵士のフィンレターを演じるのは前作同様、シリーズ2作で脚本とプロデューサーを担当しているJ. ステファン・ピース。
予算がないのでお偉いさんも出演するわけだ。
そして本作の序盤には前作の映像がふんだんに使われている。
同じ人を使い左右に走らせ、トマト大戦下の4都市の戦況を伝える映像、ヘリの事故、図書館でトマトと呟き大騒ぎ、無許可噴水スキューバダイビングなど、前作の見どころを垂れ流すお得感。
あまりに使われすぎて、テレビ局に女性が電話してきて「パート2をやってよ。パート1の映像ばかり流して手抜きだわ」と批判される始末。
同じくピザ屋で働くのは兵士の甥とその友達。
そしてまさかの友達役は若かりし頃のジョージ・クルーニー。
こんなトマト映画に出ていたなんて!
しかも主役級なので出番が多い。
この時のことを言及している映像とか記事がないか調べたけれど残念ながら見つからなかった。
そんな女好きなクルーニー演じる男は、“優勝者はロブ・ロウとデート”という嘘の賞品で釣り、数十人の女性の連絡先をゲット。
今ではロブ・ロウよりクルーニーの方がモテモテだ。
前作では大統領報道官が黒幕であったが、今回は大学教授がトマトを使って世界征服を試みる。
今回は実験を重ねた結果、トマトに音楽を聴かせて人間化することに成功。
音楽のジャンルによって実像する人間の容姿が異なる。
音楽といえば、本作の最初に前作のテーマソングの替え歌が流れる。
「今回の2作目が当たったら、3作目もすぐに作られるはず」といった意気込みが歌われる。
3作目は出来たのか気になるところ。
はい、作られています。
2作目は500万ドルの興収を上げヒット。
3作目のタイトルは『Killer Tomatoes Strike Back!』(1991)
4作目もあり『Killer Tomatoes Eat France!』(1992)
いつか観たいですね。
ピザ屋の店員の甥が配達で教授の家に行った時に出てきた女性が今回のヒロイン、タラ。
甥とは知人らしい。
そんな研究の中で突然変異を起こしたトマトが誕生。
しかし実験の失敗作とみなされ教授に捨てられる。
そんな捨てられたトマトをタラが救出してF.T.(ファジートマト/ふわふわトマト)と名付ける。
F.T.のせいなのかよくわからないが、この瞬間にタラはトマト人間になってしまう。
その後、ピザ屋にやってきたタラはなぜか性欲が溢れ出ていて甥っ子に迫る。
トマト人間の子孫を残そうとしているのか。
まるで『スピーシーズ』(1995)じゃないか。
そんなトマト人間と化したタラは甥っ子とレストランに行くことに。
そこでスタッフがヴァイオリンを弾き始めた。
奏でられたベートーヴェンの運命を聴いたタラはトマトになってしまったのだ。
そんなトマトを目にしたフクヨカなおばちゃんが「トメェイト~!!」と叫んだ。
レストランはパニックに。前作の図書館を彷彿とさせる。
フクヨカなおばちゃんがレストランの外でテレビ局のインタビューを受ける。
しかしインタビュアーはおばちゃんをイジりまくる。
ボッチでレストランで食事をしていたこと。
太っていること。
なおこの絡みは物語上特に必要はない。
本作の新キャラである教授の下で働き始めた七三分けのブロンドガイも謎キャラ。
突然「この映画にカーチェイスはあるかい?」とその辺にいた男女カップルに聞き、
「ないわ。まだ25分だもん」と返答されるとトラックに乗り込み壁に軽く激突。
その時間わずか5秒。
女「最短のカーチェイスね」
男「低予算だからな」
といった無駄なやりとり。
低予算でも頑張ろうとする姿勢が涙ぐましい。
F.T.についてもう少し話そう。
可愛らしい遊戯王のクリボーのような毛の生えたトマト。
その可愛さから最後にはぬいぐるみが発売されるほどの人気っぷりだ。
そしてここでも映画を利用してぬいぐるみのCMを自然な流れで放送。
クリスマスシーズンに発売するらしい。
そもそもF.T.ってE.T.じゃないか。
しかし1982年、アタリがクリスマスシーズンに発売したE.T.のゲームは大コケして“史上最低のクソゲー”と称されてしまったなぁ。
F.T.ぬいぐるみが売れることを願っています。
ここから凄い展開が。
トラブルもあり、劇中途中で予算がなくなり実際の監督が撮影中止を宣言。
監督は「俳優を使い回したし、俺だって3役演じた。特殊効果を見てないのか?見せてやれ。」と言う。
スタッフが何分か前に劇中で使用された絵画を見せる。
いや特殊効果じゃない。もはやツッコミが追い付かない。
映画俳優組合に加入する男性まで出てきた。
「規約の第7.3章、第4副段落5行目に書いてある“セリフのある者には報酬を”」
喋った者を指さし、彼に400ドルを払えと言う。
終いにはその俳優組合の奴も喋ったから金を払えと言う始末。
「みんな喋ったら400ドルだぞ!」
煽る俳優組合。
「いいか、みんな喋るなよ!」
抑制する監督。
「はい!わかりました」
と全員で返事をする。
こりゃダメだとうなだれる監督。
映画再開。
よくできたコントだ。
次のカットでスポンサーをつけるためあからさまに商品を宣伝。
ペプシ、ネスレのクランチバー、ムースヘッド(ビール)、フォスターズ(ビール)、歯磨き粉。
そんなこんなで終盤へ。
研究室に囚われたタラを救いにみんなで向かう。
トマト人間と戦うため前作同様に再び招集された潜水の達人グレッグ、変装の名人サム・スミス、フィンレター中尉。
今回はそこそこ役に立つ。前作同様、最後には英雄として讃えられる。
しかしながら雑な作戦プラン。
ガス室にいれられたタラ。
もうダメだ。
「あっトマト人間はガスを浴びると元の人間に戻るのだった」
とうっかり表情な教授。
めでたしめでたし。
前作のラストで出てくるニンジンはどうなったんだと危うくテレビ局に私もクレームを入れそうになった時だった。
これまたしっかり伏線が回収された。
ラストにニンジンがテレビ局を襲撃してきたのだ。
さすが前作から10年経っているだけあってたくましくなっている。
この続編、かなり見やすく1作目よりも楽しい1本になっている。映画愛を感じる。
予想外に作りこまれている。
トマトという一種のジャンルを創り上げた功績は讃えずにはいられない。
アカデミー賞にトマト部門作ったら総なめにすることでしょう。
コマンドー的マッチョもいっぱいいるよ。
最後はトマト人間のままというのを匂わせ、『スリラー』的なオチで終わるよ。
80年代の匂いがプンプンな作品でした。
魅惑の深海コーナー
トマトと戦ったジョージ・クルーニーが大作に出演するまでを振り返る。
1961年5月6日生まれ、現在58歳。
1978年
『遥かなる西部』
このテレビシリーズにエキストラ出演して演技キャリアがスタート。
1982年
『And They Are Off』
1983年
『Grizzly II: The Concert』
1984年
テレビシリーズ『リップタイド探偵24時』
テレビシリーズ『E/R』で初めて主要人物を演じた。
ややこしいことにクルーニーの出世作の『ER緊急救命室』とは無関係。
テレビシリーズ『ジェシカおばさんの事件簿』(1984~1987)
1985年
テレビシリーズ『驚異のスーパー・バイク ストリートホーク』
テレビシリーズ『私立探偵ハリー』
1986年
テレビシリーズ『Hotel』
テレビシリーズ『Throb』
『コンバット・アカデミー/笑激作戦!』
テレビシリーズ『The Facts of Life』(1986~1987)
1987年
テレビシリーズ『刑事ハンター』
『ハイスクールはゾンビテリア』
テレビシリーズ『ゴールデン・ガールズ』
『Bennett Brothers』
『The Law & Harry McGraw』
1988年
『リターン・オブ・ザ・キラー・トマト』
ここでようやくトマト!!
これ以降もテレビシリーズにちょこちょこ出ながら…
1994年~2000年
『ER緊急救命室』
32歳のとき、NBCのテレビドラマ『ER緊急救命室』のオーディションを受ける。これで芽が出なければケンタッキーへ戻ろうと決めており、ズボンのポケットにケンタッキー行きの長距離バスのチケットを忍ばせていた。
見事役を得て、1995年と1996年にエミー賞のドラマシリーズ主演男優賞にノミネートされた。
ゴールデングローブ賞のテレビシリーズ主演男優賞(ドラマ部門)には1995年から1997年まで3年連続でノミネートされた。
1996年
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』
ロバート・ロドリゲス監督、クエンティン・タランティーノ脚本のヴァンパイアコメディで好演。
1997年
『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』
監督のジョエル・シュマッカーがゲイであるため、彼の趣味が炸裂した一本になっており、バットマンスーツに乳首がつけられたことは有名。
評価は散々でジョージ・クルーニーとロビンを演じたクリス・オドネルは、ゴールデンラズベリー最低スクリーンカップル賞にノミネートされてしまった。
彼にとって黒歴史になるが、知名度を上げ、これを機に大作に出演するようになった点では語るのに欠かせない一本である。