さすがはキャメロンが愛した女
ブルースチール
エドワード・R・プレスマン
エリック・レッド
ほのぼの感想あるいは解説
銃を正義に使う者、はたまた悪に使う者。
本作はその2者から描いた作品である。
その狭間で揺れるのは彼らの心情ではなく、単なる銃の格好よさであった…。
警察学校を卒業し、念願の警察になったメーガン。
警察になりたい動機は「銃が撃ちたいから」。
彼女にとって銃は“正義”を下す象徴。
パトロール初日にさっそくその機会が現れた。
相手はコンビニ強盗。
銃をこちらに向けようとした瞬間に、5発ほど撃ちまくって強盗を殺してしまう。
なぜか犯行現場からは強盗の銃が消えており、メーガンは上司に判断ミスを指摘され、初日から停職を言い渡される。
実際はその現場に偶然居合わせたおじさんが、強盗の落とした銃をひっそりと持ち帰っていた。
その行動の理由は単純、彼にとって「銃は強さの象徴」であるため。
銃を手にした喜びで罪なき人々を撃ち殺す日々が続く。
銃を向けられたら逆らえる者はいない。
さらにやっかいなことに、彼はあの時、銃を放ったメーガンに惹かれてしまったのだ。
警察署の近くで待ち伏せして、メーガンにうまく近づいたおじさん。
そこから展開はおじさんに有利に進み、メーガンと恋人関係になる。
おじさんを演じたロン・シルヴァーのイカれっぷりが見どころでもある。
目がアル・パチーノに似ていて妙に説得力があって、顔はアンディ・ガルシアに似ている。
一人ゴッドファーザーじゃないか!!
そんなおじさんが殺害現場にメーガンの名を刻んだ薬莢が残す。
警察も動き出す。
ここからどうするのかと気になっていると、まさかのおじさんがメーガンにあっさりと全て打ち明けた。
メーガンは上司に伝えるも、確実な証拠がないため逮捕できないという。
とりあえず、メーガンには殺人課のニックが監視下につくことに。
そんなニックは何故かメーガンとデキてしまう。
ジェイミー・リー・カーティスがセクシーすぎるのが問題。
ベッドで事を済ませた後に、ニックが浴室に入ったところをおじさんが銃撃。
どうやって入ったんだ、おじさん。
続いてベッドにいるメーガンを襲おうとするおじさんだったが、うまくはいかずに逃走。
最後はメーガンがおじさんに銃をぶっ放して気持ちよく終わる。
といったように脚本は特に捻りはなく、とにかく銃が格好よく見える演出にこだわっている。
監督は『ハート・ロッカー』で第82回アカデミー作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響効果賞、録音賞を受賞したキャスリン・ビグロー。
監督賞を女性が獲るのは史上初の快挙であった。
また、1989年から1991年までジェームズ・キャメロンと結婚しており、
同アカデミー賞では、元旦那の『アバター』と賞を争った。
『ブルースチール』製作当時はキャメロンに影響を受けたのか、エンドロールに流れる静かながら重厚にメロディを刻む音楽が『ターミネーター』を彷彿とさせる。
というものの、この音楽を担当したブラッド・フィーデルは、あの『ターミネーター』のテーマ曲を制作した張本人なのだから。
それが本作における私の最大のツボである。
激しい銃撃戦後の音楽はこれに尽きる。
当時の旦那キャメロンは『ターミネーター2』を1991年に公開している。
こちらの音楽を担当したのもブラッド・フィーデルだ。
『ブルースチール』主演のジェイミー・リー・カーティスは、キャメロン監督、シュワルツェネッガー主演の『トゥルーライズ』(1994)で、シュワの旦那役を務めている。
役柄はスパイである旦那の捜査に巻き込まれるうちに、たくましい女性に変わっていくものであった。
ちなみに本作の音楽も、もちろんブラッド・フィーデル。
当時はジェイミーリー姐さんの魅力がイマイチわからなかった。
今だから分かる、エロすぎる魅力。
日米ともに大ヒットした本作は、史上初の1億ドルを超える制作費をつぎ込んだ映画としてギネスに掲載された。
それ以前は同じくキャメロンの『ターミネーター2』。
しかし『トゥルーライズ』の翌年1995年に公開された『ウォーターワールド』に記録を塗り替えられてしまった。
制作費は1億7500万ドル。
『ブルースチール』に話を戻すと、キャサリン・ビグローが描く強い女性像と、キャメロンが描いてきた女性像は似ている。
お互い惹かれて当然なのかもしれない。
キャメロンで言うと、『ターミネーター』(1984)のサラ・コナー、『エイリアン2』(1986)のリプリー、『タイタニック』(1997)のローズ、『アバター』(2010)の女戦士たち。
一方ビグローは、『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)での主人公マヤがそれに匹敵する。
明らかな違いは、映画ジャンルの違いのせいで、キャメロンの女性陣の方があまりにも強すぎるところだろうか。