ヒーローになりたかった子供時代を思い出します
シャザム!
マーク・ストロング
アッシャー・エンジェル
ジャック・ディラン・グレイザー
『キャプテン・マーベル』
一言粗筋
ほのぼの感想あるいは解説
間違いなく近年のDC実写映画の中で一番面白かった。
マーベルは10年以上かけてじっくりと積み重ねて、原作ファン以外の新たな客層を取り入れることに成功した。
最初は馴染のないキャラとしか見れなかったが、作品を重ねるごとにそれぞれに個性や生き方の違いが出てきて、大勢いるキャラクターの中から応援したい自分のお気に入りができたことも長く愛される要因になったのでしょう。
その集大成と当然の結果が、歴代興収1位の大記録を打ち立てた『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019)であった。
一方のDCはヒーローがクロスオーバーする世界を大成功させたマーベルに突き放されていた。
焦ったDCは、2013年に公開された『マン・オブ・スティール』の3年後に、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』を発表。
そして同じ年に『スーサイド・スクワッド』も公開。
両作品ともに完成度は残念なものであった。
しかし個人的には、後者はワンダーウーマン登場から一気にボルテージが上がり楽しめた。
それでもDCは次々と作品を急ピッチで世に送り込んだ。
2017年に『ワンダーウーマン』と『ジャスティス・リーグ』を公開。
前者でようやく立て直しに成功、しかし後者では突然DCエクステンデッド・ユニバースが開始した。
単体作品も公開されていないアクアマン、サイボーグ、そしてドラマ版とは関係のないフラッシュらが一気に登場。
馴染がなさ過ぎてついていけない私。
まさに「急がば回れ」。
フラッシュ、急ぎ過ぎだぞ~。
そんな流れで公開された『シャザム!』は、予想外なことにいかにもマーベル感が強く、私も惹かれてしまった。
いや、スーパーマンもバットマンも好きですよ。
ただ、クリストファー・リーヴ版のように親しみやすい感じや、ティム・バートン版のような着ぐるみ感というかおもちゃ感のあるのが見たいんですよ。
最近のはただただ能力を無駄遣いした激しいアクションの連続。
そりゃ薄っぺらい。
見せ場の作り方が下手なんでしょうね。
ヒーローものに精通している人たちが作ったならそうはならないと思うんだけどなぁ。
CGを使ったアクションだけが激しくても、ドラマの部分が濃厚で感情移入しやすければいいのです。
『シャザム!』のストーリーは特に捻りのない王道のヒーロー映画です。
それがいいんです。わかりやすいから。
馬鹿みたいなこと言っているけれど簡潔で楽しめるヒーロー映画なんて最高じゃん。
今こそシャザーーーーム!!
魔術師シャザムは能力を継いでくれる後継者を探していた。
能力を悪い方向に利用されては困るので条件は「純粋であること」。
何人も面接したが後継者に当てはまる子供はいない。
気付けば老いてしまったシャザムは慌てていた。
そこでついにビリーという名の少年がシャザムに選ばれた。
彼は幼少期に母親に捨てられ、現在ではその母を探すために警察沙汰になることが度々あった。
養子として引き取られるも、うまくはいかずに複数の家庭を転々としていた。
「シャザム!」と唱えると、身体は大きくなり能力を使うことができる。
唱えるだけでなれちゃうんだから簡単でいい。
そしてまた唱えればすぐ戻れる。
スーパーマンやスパイダーマンのように変装する必要はない。
しかし他のヒーローと違って変身後の容姿が自分では選べないのがツラい。
衣装も固定式。
マントは無い方がいい。
『Mr. インクレディブル』(2004)でそう学びました。
ビリーは5人の養子のいる新しい家族に引き取られ、最初は心を開かなかったが、一緒に住む同級生と親しくなる。
スーパーヒーローオタクである彼はビリーの能力に釘づけ。
特にバットマンとスーパーマンが好き。
スーパーマンが弾いた弾丸をコレクションしているくらいだ。
コンビニ強盗に出くわしさっそく能力を試す。
「スーパーマンのように弾丸を弾けるんじゃね?」
お見事。
シャザムの能力はほとんどスーパーマンと同じ。
手からビームも出ちゃいます。
ビームで自販機を故障させコーラを出しまくる。
発想は子供ですからね。
何ができて何ができないのかを試す。
残念ながら透明になる能力はありませんが、男のロマンが詰まっている。
その様子を親友が堂々とネットにアップし、シャザムは一気に人気者に。
わかりやすいくらいの敵が現れた。
彼も同じような能力を持っていた。
演じるのはマーク・ストロング。
コミック原作の映画に出るのは5度目とベテラン。
最近だと、『キングスマン』(2014, 2017)シリーズ2作、レイノルズの黒歴史でありDCコミックス原作の『グリーン・ランタン』、そして『キック・アス』(2010)。
『キック・アス』で共演したんだし、私の大好きなアメコミファンのケイジも出してあげてくれませんか?
ストロング演じるこの敵は、幼少期のころシャザムに“拒否”された人物。
その恨みで能力を得た人間を探しまくる毎日を送っていた。
同じような経験をした人々を調査してあの場所へ行く方法を発見し、そこで魔物の力を得ることに成功。
たしかに突然出会ったシャザムとかいう変なおじさんに「お前じゃない」と認定されるのはたまったもんじゃない。
能力は欲しいが、思わずこっちも「お前じゃない」と言いたくなってしまう。
せめてそこでのやりとりを記憶から消すくらいのことはしてもらいたい。
それなりに純粋だったかもしれない子供が、これを機に反逆児になる可能性もある。
人は自分の言ったことを覚えていないが、言われた方はいつまでも覚えている。
発言には責任を持たなければならないと改めて意識させられる。
しかし日が経てばそれすら忘れてしまうのであった。
シャザム!
最終決戦へ。
このおもちゃ屋さんの床のピアノを踏み鳴らすシーンは『ビッグ』(1988)のオマージュですね。
大人になりたいと占いマシーンに願った子供が翌日目覚めると大人になっていたトム・ハンクス主演のファンタジー。
何度見ても大好きな作品。
アイディアに困っている子供向けおもちゃ会社の社長を、子供心を実際に持つ主人公が当事者の発想力で助ける。
特にこのピアノの名シーンは社長を童心に返らせる重要な場面。
大人になると膨大な経験と知識があるせいで、それが邪魔して物事を純粋な目で見れなくなってしまうのがやっかいだなとつくづく思う。
映画やドラマはそれを思い出すきっかけを与えてくれるいいものです。
一人じゃとても勝ち目がない。
DCヒーロー誰か助けに来いよと思ってしまうが、『シャザム』にはその展開は必要ないようだ。
こここそ最も上がる瞬間!
養子キッズが「シャザム!!!!!」
この展開は熱い。
パワーレンジャーを見ているよう。
全員が元々着ていた服と同じ色に変身している。
魅せ方が上手い。
選ばれし者が選ばれない者たちをヒーローにさせ、協力して悪と闘う。
最高の展開。
誰しもがヒーローになれる。
幼少期になりたいと憧れたヒーローや、夢中になった日々を思い出す。
まさにヒーロー映画として手っ取り早い一本です。
最後にとある方が登場したけれど、『シャザム!』はそちらの世界とは切り離して単体での続編が見たい。
魅惑の深海コーナー
2人のキャプテン・マーベル
シャザムはもともとキャプテン・マーベルという名で1939年に誕生した。
アーティストのCC・ベックとライターのビル・パーカーによって生み出された。
初登場は1940年2月発行の『ウィズ・コミックス第2号』。
出版社はフォーセット・コミックス。
1940年代は売上面でスーパーマンを凌ぐほどの人気であった。
しかしそのせいでスーパーマンに目をつけられてしまった。
彼が登場したのは1938年4月18日に発売された『アクション・コミックス 第1号』。
1941年、ディテクティブ・コミックス(現在のDCコミックス)は、出版社のフォーセット・コミックスと同年にキャプテン・マーベルを映画化したリパブリック・ピクチャーズを、“キャプテン・マーベルはスーパーマンの真似”という主張により著作権の侵害で訴えた。
そして訴訟から12年後まで裁判は続き、1953年8月14日、フォーセット・コミックスがDCコミックスに40万ドルを支払い、今後一切キャプテン・マーベル関連のコミックを出版しないことで和解した。
しかし『キャプテン・マーベル』を失った代償は計り知れず、同年にウィズ・コミックスとフォーセット・コミックスは閉鎖することになってしまった。
話は変わりマーベルの『キャプテン・マーベル』の初登場は1967年に発売された『マーベル・スーパーヒーローズ 第12号』。
ライターのスタン・リーとアーティストのジーン・コランによって生み出された。
この時はまだ、MCUでご存じのキャプテン・マーベル(Captain Marvel)ではなかった。
最後には人類を助けるために行動するが、当初はスパイ活動で地球に送られてきたクリー人の男戦士Captain Mar-Vellであった。
彼が助けた市民が名前を聞き間違えて『Captain Marvel』と呼ばれるようになった。
しかし、このヒーローコミックは読者の心には響かなかった。
1972年、DCコミックスは消滅したフォーセット・コミックスから別のキャプテン・マーベルを獲得した。
この時期にはマーベル・コミックが“マーベル”という単語を商標登録していたため、キャプテン・マーベルは名前を変えざるを得なかった。
そして改名して誕生したのがシャザム。
映画と同じく、原作でも唱えていた単語をそのまま名前にした。
30年の時を経て、かつて訴えられた会社のものになるというなんとも皮肉な展開だ。
いざこざのあったスーパーマンとも共演している。
映画でもわずかに共演していたが、このまましっかりとクロスオーバーしてシャザムがスーパーマンに皮肉なセリフを吐く場面が見てみたい。
MCUでご存じのキャプテン・マーベルに繋がるキャラクターが初登場したのは、1968年3月発売の『マーベル・スーパーヒーローズ 第13号』だが、この時はまだアメリカ空軍少佐のキャロル・ダンバースとして登場している。
彼女が超人的な能力を身につけたのは、1969年11月に発売された『キャプテン・マーベル 第18号』である。
続いて1977年1月発売の『ミズ・マーベル 第1号』でミズ・マーベルとして活動する。
ようやくキャプテン・マーベルを名乗るようになったのは、2012年6月に発売された『アヴェンジング・スパイダーマン 第9号』であって意外と最近である。
(参照:Digital Spy, newsarama, Wikipedia)