『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)~孤独を癒す男女東京物語~

ドラマ
出典:Pixabay
映画を見れば誰かと共有して話したくなる。
しかし話す人がいない。
そんな映画愛好家は世界中に山ほどいることだろう。
私もその一人。
そこで私は独自の感想をネタバレ含んでただただ長々と述べる自己満駄話映画コーナーを創設した。
お役に立つ情報は一切なし!
しかし最後まで読めばきっとその映画を見たくなることでしょう。
さぁ集まれ映画好きよ!

今宵の映画は…
NJ
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生きるとは孤独である

ロスト・イン・トランスレーション

原題
Lost in Translation
公開
2003年
製作国
アメリカ合衆国
日本
製作
ソフィア・コッポラ
ロス・カッツ
監督
ソフィア・コッポラ
『ヴァージン・スーサイズ』(1999)-監督&脚本
『マリー・アントワネット』(2006)-監督&脚本&製作
『SOMEWHERE』(2010)-監督&脚本&製作
『ブリングリング』(2013)-監督&脚本&製作
『ビル・マーレイ・クリスマス』(2015)-監督&脚本&製作総指揮
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(2017)-監督&脚色&製作
脚本
ソフィア・コッポラ
出演
ビル・マーレイ
『ゴーストバスターズ』(1984)
『恋はデジャ・ブ』(1993)
スカーレット・ヨハンソン
『ゴーストワールド』(2001)
『ジョジョ・ラビット』(2019)
編集
サラ・フラック
『ブリングリング』(2013)
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014)
『ビル・マーレイ・クリスマス』(2015)
音楽
ケヴィン・シールズ
『マリー・アントワネット』(2006)
撮影
ランス・アコード
『バッファロー’66』(1998)
『マルコヴィッチの穴』(1999)
『アダプテーション』(2002)
『マリー・アントワネット』(2006)
『かいじゅうたちのいるところ』(2009)
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一言粗筋

異国で戸惑う中年ハリウッドスターと寂しげな女性との交流を描く

ほのぼの感想あるいは解説

私の大好きなビル・マーレイおじさんが主演なのに、今まで観るタイミングを逃しておりました。

この度、縁あってようやく鑑賞に至りました。

この映画、外国人が東京という異世界に迷い込んだ感じがありますが、日本人の私でも共感できました。

それは誰しもが抱く孤独な感情を、外国人の異国での体験を通じたプロットに置き換えられているからではないでしょうか。

そのまま2回目を観たくなったほどに余韻に浸るのが物寂しくなりました。

観ながら自分の隠したい感情を掘り起こされている気分に陥りました。

しかしそれは不快ではなく、描かれることで客観的に見れて自分への理解にもつながるのです。

都会の喧騒には目眩がするし、平穏な家に帰ると逆に虚無を感じる。

その落差の日々に疲労感を覚える。

決して混じり合わない非日常と日常の狭間を行き来することに何の意味があるのだろうか。

かといって「自分とは何なのか」と定義づけようとすると苦しくなる。

そのため異国でこそ同じ境遇に立ち、心で理解し合えた孤独な2人が解き放たれたようなラストシーンがより際立って美しかった。

彼らは本国では出会うことはなかったかもしれないし、出会うこともあったかもしれない。

ただ、東京で出会ったからこそ通じ合えたことは確かである。

全てはタイミング。それが運命なのかもしれない。

自然なり建物なり壮大な景色を見ると自分の孤独さが増す瞬間がある。

街は光り輝いているのになぜ自分の心はこんなにも曇っているのか。

しかしこの地球に住む限り、それと共に生きなければならない。

年齢を重ねて自分の考えが変わっていくのかなんて現時点ではわからない。

だから苦しんで悩む。

人と人との関係は翻訳を挟んだところで表面上でしか理解できない。

時間をかけて互いを知っていくことで関係が築かれていく。

そこから友情の絆を深めるのか、それとも恋愛感情を抱くのか。

人間は不思議。

傷ついてまでも愛を求める者がいれば、そこまでして求めない者もいる。

時に片方が求めすぎることもある。

なぜ結婚をするのだろうか。

なぜ永遠だと思うのだろうか。

それぞれの人生、主人公は自分。

結局は全て自分の足で進む道。

理解しすぎても反撥し合う。

それは深く理解できていないからなのか。

理解って何だ。

言葉が必要なのか。

時には感情を読むための翻訳も必要かもしれない。

しかし表情の見えないメールなんて意味をなさない。

重要なことは直接会って話すこと。感情は日々変わるのだから。

劇中の二人も一緒に過ごした時間は短くとも理解し合えた。

それがよくわかるのがベッドシーン。

といっても絡むことはなく、ビル・マーレイスカーレット・ヨハンソンの足を撫でて眠りにつくのみ。

ピュアで繊細な感情を表現し、妖精のように消えてしまいそうな儚い雰囲気を醸し出す撮影当時17歳のスカヨハの魅力も強い。

アクションを華麗にこなし、すっかりたくましくなった今の彼女には出せない。

もちろんビル・マーレイおじさんの人生に疲れ切った悟り顔があってこそ相乗効果を生んでいる。

最後にビル・マーレイスカヨハの耳元でなんて囁いたのだろうか。

「僕らは出会うべくして出会った。心の寂しさを分かち合うために。これからは自分の思うように縛られずに生きていけばいい。君は解放された。自由なんだ。もう迷う必要はない。」

こんな感じかな。

音量を鮮明にして聞き取ろうとした者もいたらしく、IMDbにはその詳細が書かれていたが、これは知り過ぎない方がいい

自分の頭の中で思ったことをボブに言わせればいいのです。

シャーロットをあのような表情にさせる一言を。

そうすることでこの映画はあなたのものになる。

ボブとシャーロットとあなたの3人が関係づけられ、相互理解というカタチに収まる。

ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンのあのキスは台本には無くアドリブであるというから素敵としか言いようがない。

つまりそれは溢れ出す感情に従い自然に行動したということ。

間違いなく今まで観てきた映画の中で最高のエンディングの一つ。

The Jesus And Mary Chain – Just Like Honey (Lost in Translation OST)

The Jesus & Mary Chain『Just Like Honey』がまた余韻を美しくさせる。

これからのシャーロットに希望が満ち溢れてくる。

少なくとも理解し合えたと思ったら自分はその人を離したくはない。離れたくもない。

ボブのような俳優という職業はイメージが先行する。

作りこまれた世界で人を惹きつける。

だから見る側が勝手に思うように思えばいい。

映画もそうである。

普段の姿が楽しそうに見えていても、それは自分を保とうと作っているだけかもしれない。

作っていてもそれも自分である。

その自分の裏を返せば孤独な自分がいる。

真の姿は理解し合えた大切な人にだけ見せればいい。

それを見せて崩れる関係ならばそれまでの二人。

そこから再び立て直せるのならばそれこそがその二人である。

だからこそ目と目を見つめ合って話せば前に進めることは確実である。

分かり過ぎない方がちょうどいいのかもしれない。

だから追い求めたくもある。

でも心は繋がっている方がいいのかもしれない。

時には離れて冷静になることも必要。

可能性は無限ですね。

前に進もう。

一言教訓

感情の変化が伴って人は生きていることを感じる

明日自慢できるトリビア

ソフィア・コッポラビル・マーレイを主演に想定して脚本を書き、彼がオファーを断わったらこの映画を作らなかったと語っている。

ソフィア・コッポラの父フランシス・フォード・コッポラは、娘に将来性のある高精細度ビデオ(ハイビジョン)で撮影することを強く勧めたが、彼女は「フィルムの方がよりロマンティック」と言う理由でフィルム撮影を遂行した。たしかにこれはBlu-rayよりもDVDの淡い画質で観たい。むしろVHSで観たい。

本作はソフィア・コッポラ自身の人生を基に描いている。スカーレット・ヨハンソン演じるシャーロットの夫ジョン(演:ジョヴァンニ・リビシ)は、ソフィアの元旦那(1999-2003)のスパイク・ジョーンズがモデルだとされている。離婚間近に本作を撮影していることになる。

さらに噂によれば、アンナ・ファリス演じるおバカな雰囲気のアクション女優はキャメロン・ディアスをモデルにしていると推測されている。彼女とスパイク・ジョーンズ監督は『マルコヴィッチの穴』(1999)で共に仕事をしている。キャメロンは2000年『チャーリーズ・エンジェル』に主演してアクションをこなしている。なお、その噂をソフィアはエンターテインメント・ウィークリーのインタビューで否定している。また、スカーレット・ヨハンソンはスパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』(2013)で人工知能の声優を務めている。この作品は『ロスト・イン・トランスレーション』同様にアカデミー脚本賞を受賞している。解り合えなくも解り合えていた二人なのだろうか。

ヨハンソン演じるシャーロットが地下鉄に乗り、漫画を読んでいる男性を見下ろすシーンがあるが、その漫画は『攻殻機動隊』であり、スカーレット・ヨハンソン主演で2017年に実写化することになる作品である。

ビル・マーレイ演じるボブがサントリーのCMを撮影している時に、ロジャー・ムーアのようにと頼まれて、ボブがショーン・コネリー(版の007)の方が好きだと言うシーンがあるが、実際にショーン・コネリーは1991年からサントリーのCMに出演していた。

劇中のボブのCMは、1980年に放送されたフランシス・フォード・コッポラ黒澤明の共演したサントリーのCMから部分的にインスピレーションを受けている。

ソフィア・コッポラは本作でアカデミー脚本賞を受賞したが、アカデミー賞史上初めて脚本、監督、製作としてノミネートされた女性にもなった。

現時点でビル・マーレイが唯一アカデミー賞にノミネートされた作品である。

参照サイト: IMDb 

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