好きなものは全て手に入れたいのです
シング・ストリート
ジョン・カーニー
ケヴィン・スコット・フレイクス
クリスティアン・グラス
マルティナ・ニーランド
ラージ・ブリンダー・シン
ポール・トライビッツ
フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
マリア・ドイル・ケネディ
エイダン・ギレン
ジャック・レイナー
ジュリアン・ウルリッチ
一言粗筋
ほのぼの感想あるいは解説
初めて映画館で見た時と今とではかなり自分の状況も違う。
さらにあれから様々な経験を経たので、本作を見る角度が少し変わっていたことも感慨深い。
これだから映画はいいものです。
全く同じ感情で見ることは二度とないのだから。
といいつつ、もちろん変わらないものもあります。
本作はまさに私自身が描かれていて共感しながら見入ってしまう。
何が共感できたのか。
そりゃ劇中のオリジナルソングについては今さら言うことはありません。
当時すぐにサントラを買いまして今でも聴いております。
Blu-ray BOXも持っております。
それではまずは主人公コナーに対して。
彼は好きな音楽にすぐに影響を受ける。
そして翌日には髪型とファッションがそれに変わる。
まずは「Duran Duran」。
1981年に開局したMTVの影響もあって、斬新なビジュアルと音楽とMVで時代を席巻したバンド。
本当なら私もデヴィッド・ボウイのようなメイクをして出かけたいくらいなのですが、肌荒れが心配な年頃ですからね。(そこじゃない)
音楽よりも映画に影響を受けることが多いけれど、コナーの気持ちは物凄く理解できる。
私は自我に目覚めた高2の時から髪型をコロコロ変え始めるようになりました。
心は変わらずも、外見くらいは常に変化を求めたい。
新鮮さを味わいたい。
誰かが自分を想像した時に、今の自分がその姿とは違っていたい。
固定のイメージで自分を見てもらいたくないから。
何かに縛られて自分を隠すほど愚かなことはない。
誰のために隠す?
それは誰の為でもなく、ただただ自分が満足したいから。
かぶれることで自分が何を求めているのかが細分化され、今後歩む道が開拓されていく。
かぶれている人は傍から見たら痛い子かもしれない。
そんなもの気にしない。
馬鹿にされたって構わない。
自分さえ自分のことを理解できていればそれでいいのだ。
それを描いた『ヤング・ゼネレーション』(1979)という名作もありましたね。
高校卒業後に進路の定まらないイタリアかぶれのアメリカ人が主人公です。
私はアメリカかぶれの日本人なので共感できます。
何かの真似をしたり、かぶれると、自分が一回り大きくなった気がするんですね。
あくまで気がするだけです。
ただそれにより自信が生まれる。
そして自信は、やがて勇気を生む。
勇気は希望となるが、それは絶望に堕ちることもある。
どちらを行くかは自分次第。
運なんて人生にはない。ただの結果論。
自分が辿ってきた道のりがそこに行きついたまで。
結果が出ないのは自分の努力が足りないだけ。
そんなことを考える日々。
続いてコナーが真似するのは兄貴が教えてくれた「ザ・キュアー」。
私は1992年に発売された『Friday I’m in Love』という曲が好きです。
最後はスパンダー・バレエの『Gold』のMVを見て真似。
コナーは憧れの人物の真似を繰り返し、最終的には自分らしさを理解して、自分の音楽を見つける。
最後にコナーがロンドンに向かう時に流れるマルーン5のアダム・レヴィーンが歌う『Go Now』には、今現在の私の揺るぎなき決意が語られている。
以下がこの曲のメッセージ。
自分の求めていた“人生を変えるチャンス”がやってきたときは逃してはならない。
今の君にはあの頃なかった自信に満ちている。
誰かに過ちだと思われても自分を信じて進むだけ。
口だけで行動しないのは時間の無駄。
そこに後悔はない。
後ずさりする隙も与えないくらいに走り抜けろ。
重要なことは挑み続けて自分のベストを尽くすこと。
いま行かなければもう行くことはできない。
いま変わらなければもう変わることはできない。
いま行かずしていつ行く?
いま行かなければ一生ここにいる事になる。
いま行動しなければ一生知らないまま。
行くチャンスはいましかない。
やはり本作を見ると、「自分に影響を与えた曲」は何だろうかと考えてしまう。
影響というと少し大袈裟ですが、完全に今の気分でのチョイスです。
10曲ほどあげてみよう。
Bon Jovi 『Welcome to Wherever You Are』
Bon Jovi『Have a Little Faith in Me』
David Bowie『Heroes』
The Chainsmokers & Coldplay『Something Just Like This』
Harry Styles 『Sign of the Times』
Aladdin『A Whole New World』
菅田将暉 『ロングホープ・フィリア』
Imagine Dragons『Time』
Foo Fighters『Best of You』
次の共感ポイントはコナーの兄貴。
これがめちゃくちゃ良き兄貴なんだ。
演じるのは最近『ミッドサマー』(2019)でババアに手伝ってもらいながら、ババアに見守られながら身体を張っていたジャック・レイナー。
自分の断念した音楽を弟が楽しそうにやっている姿を見て、嬉しそうに音楽を語りながら勉強会を開いてくれるんですね。
弟コナーはそんな兄を信頼している。
しかし両親の別居が伝えられる家族会議を経て、自分の人生のうまくいかなさに、ついに弟に対してギターを壊しながら憤慨する。
「荒れくれる道を歩いて切り開いてきたのはこの俺で、お前はその楽な道を辿っているだけ。俺は望まず出来た子供で、お前は親にも愛されている。かつては俺がジェット気流だったんだぞ!」
ここまで感情的になる兄を見たことのない弟は圧倒されてしまうわけです。
熱い兄貴ですね。
本編が終わり、エンドロールに入る前に「For Brothers Everywhere」という1文が出る。
これは兄のいる私には心に突き刺さるとどめの一撃。
私の兄も弟を気にかけて連絡をくれるような兄である。
時にはピンチを救ってくれたり、時には殺されそうになったこともあった。
この映画は兄弟の物語としても秀逸ですね。
最後にコナーがラフィーナを連れてロンドンに向かうことに対して、
「結局コナーにとって重要なのは女じゃないか!音楽を利用して女を振り向かせたかっただけじゃないか!」
という意見もあるようですが、わからなくもないけれど結局好きな人のことが最優先でしょう。
だってまだ高校生だもの。それくらい許してあげて。
それでも好きな子1人すら振り向かせられない男に、数千人をエンターテインすることはできません。
正直、エイモンも連れていけよと思いましたが、きっとコナーが先にロンドンでレコード会社との契約をもぎ取って、後からエイモンを招集するはず。
そう願いたい。コナー君、友情は一生ものですから大切に。
エンドロールでかける曲のセンスもいいんですね。
私が劇中で最も好きな曲の『Drive It Like You Stole It』がエンドロールでもう一度かかるわけです。
わかってますね。
わかってない映画も多いんです。
「なぜあの曲をエンドロールで流さず、そっちの曲(劇中で使われてはいるが別の曲)を流すんだい?」といった感じです。
例えは思い浮かびません。すみません。(こういう時にとっさにいくつか映画が浮かぶと締まるんだけど、僕にはまだまだそんな能力はございません)
さらに本作の場合、『Riddle of the Model』の作曲過程も音声だけですがエンドロールで流してくれるのです。
シング・ストリートが歌う劇中歌は、ほとんど監督のジョン・カーニーが作詞して制作したオリジナルのもの。
つまり音楽が誕生する瞬間を共に味わえるんです。
劇中でのコナーとエイモンの曲作りもそうですが、音楽以外にしてもモノづくりは本人が第一に喜びを得れないことには完成しない。
もちろんそれだけで満足な人もいれば、誰かに共有してもらいたい人もいる。
そしてその作曲が完成したと同時に、劇中でコナーが歌う『Riddle of the Model』に自然と切り替えるマジック演出。
まさにパーフェクトと言わざるを得ないですね。
10点中10点満点の映画です。
これは『スタンド・バイ・ミー』、『ウォールフラワー』と併せて“私の映画3部作”。
青春映画で初心に帰り、そして現在に後悔が無いように今を生きたい。
一言教訓
明日自慢できるトリビア
①エイモンを演じたマーク・マッケンナの実父はミュージシャンであり、エイモンという名前である。
②コナーのお父さんが妻との別れを家族会議で子供たちに伝えるシーンで、カトリックである彼の言った「法的に、別居は出来るが離婚は出来ない」という法律は1985年当時実際に存在した。アイルランドで離婚が正式に可能になったのは1997年である。