『猿の惑星・征服』(1972)~時代は変わらない~

SF
出典:Pixabay
映画を見れば誰かと共有して話したくなる。
しかし話す人がいない。
そんな映画愛好家は世界中に山ほどいることだろう。
私もその一人。
そこで私は独自の感想をネタバレ含んでただただ長々と述べる自己満駄話映画コーナーを創設した。
お役に立つ情報は一切なし!
しかし最後まで読めばきっとその映画を見たくなることでしょう。
さぁ集まれ映画好きよ!

今宵の映画は…
NJ
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シーザーの気持ちになったら涙

猿の惑星・征服

原題
Conquest of the Planet of the Apes
公開
1972年
製作国
アメリカ
監督
J・リー・トンプソン
『0の決死圏(1969)』
『最後の猿の惑星(1973)』
出演
ロディ・マクドウォール
『猿の惑星(1968)』
ドン・マレー
『ツイン・ピークス(2017) 』
リカルド・モンタルバン
『スパイキッズ2 失われた夢の島(2002)』
脚本
ポール・デーン
編集
マージョリー・ファウラー
アラン・L・ジャッグス
音楽
トム・スコット
撮影
ブルース・サーティース
『白い肌の異常な夜(1971)』
『ダーティハリー(1971)』
人間に奴隷化された猿たちが革命を起こす。
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さらっと登場人物紹介

マイロ/シーザー
(演:ロディ・マクドウォール)
前作で殺されたコーネリアスジーラから生まれた息子。
言葉を話せる両親の遺伝を受け継いだマイロは、
サーカスを運営する親切な人間アーマンドに引き取られ育てられる。
話せるようになり人間の仕草も身に着いたマイロ。
猿の自虐モノマネをできるほどの賢さ。

アーマンド

(演:リカルド・モンタルバン)

前作『新・猿の惑星』でジーラとコーネリアスの息子マイロを引き取った人間。

サーカスを運営している。

ブレック知事

(演:ドン・マレー)

猿奴隷制度を推奨する都市の知事。

反逆しようとする猿がいるものなら即処刑。

ほのぼの感想&解説

未知のウィルスが蔓延し、犬と猫が絶滅した地球。
猿と人間はなぜか免疫があったため生き残った。
そして人間が猿をペットにする世界に。
しかし物覚えの良い猿は、人間の世話をする奴隷として扱われるのであった。
本作のオープニングなのだが、
まさにモンド映画を彷彿とさせる撮り方と耳障りな波長の音楽。
モンド映画とは
世界各地の秘境の奇習や大都会の夜の風俗、事故や処刑の瞬間など衝撃映像を、虚実取り混ぜて見世物感覚で構成したドキュメンタリー風映画を指す。
この名の由来は、1962年に公開されたヤコペッティ監督作『世界残酷物語』のイタリア語原題がMondo Cane”によるもの。
嘘なのか本当なのかわからない内容で世界中で大ヒットとなった。

アーマンドとマイロはサーカスの宣伝である都市に訪れる。

もっと猿らしい仕草をしないとバレるぞ!
とアーマンドに調教される賢い猿。
そこで猿が警官に虐待される様子を見て憤りを感じたマイロが、
「愚かな人間め!」
と叫んでしまう。
するとその警官らは誰が言ったのか群衆に問い詰めた。
「私です。」
とマイロをかばうアーマンド。
その時、別の猿が騒動を起こし、そちらに向かう警官。
その隙に逃げたマイロ。
後を追うアーマンド。
逃げた先で、「僕のせいで」と嘆くマイロ。
このまま逃げれば殺されてしまうので、
自首することにしたアーマンド。
マイロに猿の中に入り込む方が安全だと説明し手順を教える。
エイプが輸送されてくる檻の中に入って猿管理局に潜入するというもの。
マイロはチンパンジーの檻の中へ入ってしまう。
この檻の中にボルネオ島で捕獲された5、6匹のオラウータンがいて、さすがに本物は使えないので着ぐるみなんだけれど…威圧感が凄い!!(笑)
そして
「ボルネオ島にチンパンジーはいないぞ!」
と捕らえられ緑の作業着を着せられる。
『猿の惑星』の中でチンパンジーが着る服の色である。
ボルネオ島にチンパンジーがいないというありがたい知識を植え付けてくれた猿当局のスタッフ。
ボルネオ島はオラウータンとテングザルが有名なことは知っていたが、
チンパンジーはいないのか。
ボルネオ島行きたいなぁ。
3つの国(マレーシア、ブルネイ、インドネシア)が領有する島って世界中ここだけなんだってさ。
『猿の惑星』を見て猿に会いたくなる、なんか罪悪感を感じてしまうのだが、
悪いことではないだろう。

そして競売にかけられる奴隷のマイロ。

結果この都市の知事であるブレックのもとで飼われることに。

名前を付けようと、マイロに辞書を引かせる。

※辞書ではなく何かの書物かもしれない。
するとマイロが選んだのは“シーザー”
“皇帝”を意味する固有名詞だ。
これこれ!とアピールするマイロが何とも愛らしい。

一方、捕らわれて尋問を受けるアーマンド。

その結果、マイロの存在をバラしてしまい、窓から逃げようとするもビルが高くて死亡。
猿管理局で彼の死を聞いたマイロの目には涙が。
放心状態で外をうろつくと目に入ったのはアーマンドのサーカスの広告。
それを見て泣き叫ぶマイロ。
このシーンは名シーンだ。
胸が痛む。
そして憤りがピークに達したマイロは復讐をもくろむ。
しかし失敗に終わり猿管理局に捕まる。
アーマンドが飼っていた話せる猿なのではないのかと尋問を受ける。
苦しい尋問の末に言葉を発するマイロ。
「やめて」
この尋問シーンもマイロの絶叫が響き渡り、ムゴくてみるのがつらい。
猿に優しい猿当局のブレック知事の側近マクドナルド君の協力もあり、華麗な死んだふりの演技をみせ、刑執行人を殺害して脱走したマイロは革命のため仲間を集めるのであった。

勢いを増して反乱を起こすエイプ軍。

武器を奪い取り人間を追い詰めるエイプ軍。

もはや映画を超えて歴史の決定的瞬間を映した実際の報道映像に見えてくる。

自分たちの権利を求める“公民権運動”である。

その時の銃をぶちかますチンパンジーがファンキーなこと!!(笑)
エイプと人類の戦争はエイプ軍の勝利に終わり、ブレック知事を猿管理局内で捕らえたシーザー。
その場では迷いながらも殺さず、外に連れて行けとエイプらに命令するシーザー。
そして人類に向けて演説を始めるシーザー。

まさにヒトラーのような狂気を感じる。

というか発音の仕方や喋り方を完全に似せにいっているのだが。

人間への憎しみを抑えきれず、全員殺してしまおうとエイプらに呼びかける。

マクドナルド君にそれは間違っていると反対される。
あまりの狂気に彼らでさえひいてしまい、ブレック知事を殺すのを戸惑う。
奇妙な間を感じ取ったスベッた感のあるシーザーは、
人間を服従させ猿が支配する『猿の惑星』にしようではないかと高らかに宣言する。

明日自慢できるトリビア

監督のJ・リー・トンプソンは人間の衣装を全て黒い色に統一させた。
またブレック知事役のドン・マレーは、
ナチスをイメージした黒のタートルネックのセーターとワードロープを提案した。

まとめ

ご存じのとおり、『猿の惑星』は人種差別を描いている物語である。

本作は特に現代のアメリカで起きる黒人の差別問題を猿に置き換え描いている。

劇中でも“猿ではなく人間をつかえ”などのプラカードを掲げている姿が見られる。

人間の労働者数の枠が減るので猿の労働に反対するストライキだ。

逆らおうとする猿がいるものならば、暴力で抑制する警官たち。

現代のアメリカで頻繁に起こってきた白人警官が無抵抗な黒人をボコボコにする様と同様である。

それが続くとどうなるかは歴史が証明してきた。

1965年8月11日から8月17日にかけてアメリカ合衆国のワッツ市で発生した『ワッツ暴動や、

1992年4月末から5月頭にかけてロサンゼルスで起きた『LA暴動』が例である。

特にワッツ暴動は、『猿の惑星・征服』に大きな影響を与えた出来事である。

白人のハイウェイ・パトロールが、道路上を蛇行運転していた黒人男性を尋問。尋問した途端に周囲の黒人が集まって来て、検挙の一部始終を見守った。結局、ハイウェイ・パトロールは運転していた当人と弟・母親を逮捕。これを切っ掛けに暴動が発生し、警察官の襲撃から市街地における集団略奪や放火へ発展。州兵を投入して鎮圧する事態にまで及んだが、暴動が続いた6日間で死者34人・負傷者1,032人を出し、逮捕者は約4,000名にも及び、損害額は3,500万ドルにまで上った。
(引用:Wikipedia)

差別されたものが差別したものに対し、

人種という1つの枠だけで判断して無差別に暴力をふるう。

街がカオス化して人種戦争が勃発する。

この『猿の惑星・征服』はシリーズ史上最も人種問題を色濃く描いた作品である。

作者ピエール・ブールの経歴

フランス出身。
1939年に第二次世界大戦は始まるとフランス領インドシナ(仏印)でフランス軍に徴兵される。 しかし、ナチス・ドイツのフランス本国占領を受けて、本国に発足した親ナチス・ドイツ政権(ヴィシー政権)の側に仏印植民地政府が付くと、彼はシンガポールに逃れ、ナチス・ドイツとの抗戦を訴える自由フランス軍に加わっている。
ブールは自由フランス軍に加わると、ピーター・ジョン・ルールという英語の偽名で自由フランスの秘密諜報部員を務め、仏印および日本軍占領下の中国ならびにビルマに潜入し、現地の反ヴィシー政権・抗日レジスタンス運動を支援していた。1943年にブールはメコン川を筏で移動しているところを親ヴィシー政権の仏印植民地政府軍によって捕えられ、ブールは強制労働の刑に科せられる。1944年、連合国の勝利が間近に迫ると、サイゴンの刑務所当局はブールの脱走を手助けしたというものである。
1994年1月30日、パリで死去した。81歳没。

(引用:Wikipedia)

上記で気付く人もいるかもしれない。

彼の代表作は『猿の惑星』の他に、

アカデミー賞作品賞を受賞した『戦場にかける橋』がある。

昨年私はタイのカンチャナブリーにあるこちらの実物の橋を見に行ってきた。

その時の詳細はこちらをご覧ください。

1943年のタイとビルマの国境付近にある捕虜収容所を舞台に、日本軍の捕虜となったイギリス軍兵士らと、彼らを強制的に泰緬鉄道建設に動員しようとする日本人大佐との対立と交流を通じ極限状態における人間の尊厳と名誉、戦争の惨さを表現した戦争映画。

これはブールの実体験を描いたものだ。

原作は1952年に出版され、映画は5年後の1957年に公開された。

『猿の惑星』1963年に出版されている。

つまり、『猿の惑星』は過酷な労働を強いる日本人を猿に置き換え描いた物語である。

我々日本人は猿として描かれ、それを見て楽しんでいる。

何とも皮肉だ。

しかし実際はブールがこのことに言及したことはない。

ただの都市伝説。

一言教訓

人間のエゴで他の生物や自然に危害を加えてはいけない。
参照サイト: IMDb

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