せめて映画の中だけは夢見させてください
レイズ・ザ・タイタニック
ウィリアム・フライ
エリック・ヒューズ
一言粗筋
ほのぼの感想あるいは解説
時代は冷戦下。
音波によるミサイル防衛システム『シシリー計画』を遂行するために大統領の命令の下、アメリカは動いていた。
そのためには希少鉱物であるビザニウムが必要であった。
しかしそう簡単には見つからない。
そんな時、ある有力な情報を手に入れた。
その鉱物はソ連で発掘され、あのタイタニック号に積まれたという。
そして1912年4月15日に大西洋の海底に沈んだ。
1,500人を超える犠牲者と共に。
事故の生存者に事情を聴きに行く。
当時の乗組員であった彼が言うには、とても大事そうに荷物を守っていた乗客がいたらしい。
その情報を頼りに、その荷物が保管されている場所を探る。
劇中の当時の技術では機械を使ってその荷物だけを引き揚げるのはできない。
それなら船ごと引き揚げてしまえ!
46,328トンもある真っ二つになった巨大な船を引き揚げるなんて無茶な。
その方法も無茶苦茶であった。
船の周りに爆弾を仕掛けて爆発の勢いで浮上させるという荒業。
ちなみにタイタニック号の調査が実際に初めて行われて発見されたのは映画公開から5年後の1985年9月1日のこと。
そのため映画製作時は詳細は分かっていなかった。
しかし劇中で描かれるタイタニック号に関する情報の内1つだけ近いものがある。
それは沈んでいる場所の深さだ。
映画では12,347フィートと推定されているが、1985年に発見された時には12,415フィートであることが判明した。
引き揚げのシーンが凄い。
なんとまぁ。
真っ二つにもなっていなければ、腐敗もせずに少し錆びついた程度で形が綺麗なまま。
もちろん真っ二つになり沈没したことは当時から分かっていたのにだ。
めちゃくちゃだけど、映画の中だけでもロマンを魅せてくれて興奮している自分がいる。
悲劇をロマンに変える力が映画にはある。
引き揚げてすぐに浸食が進むタイタニック号に調査団が次々に乗り込んじゃう始末。
「この船は浮いているのがやっとなんだぞ」と発言している張本人がその船から発言している始末。
ソ連側と揉めあいを挟んで、タイタニック号はニューヨークに運ばれることに。
1912年4月10日にイギリスのサウサンプトン港を出発したタイタニック号が、約70年の月日を越えてようやく目的地のニューヨークに辿り着いたのだ。
映画の出来は置いといてもこの展開は感動的だ。
しかし映画の中で最も重要であるお目当ての鉱物は見つからなかった。
それがあると推測されていた保管庫からは代わりにただの石ころが見つかった。
軽い謎解きから、最終的には別の場所(地上にあるとあるお墓の下)で鉱物が見つかるのだが、平和維持のため掘り起こさずに終わる。
あまり深入りして見るほどではなく、流す程度に見るのが丁度いい1本であった。
しかし虚像であれタイタニック号を引き揚げるというロマン溢れる内容は冒険心をくすぐるのであった。
一言教訓
明日自慢できるトリビア
①スティーブ・マックイーンが主役にオファーされていたが、脚本が平凡なのを感じて拒否した。彼は映画公開と同じ1980年に亡くなっている。同年に公開された『ハンター』が彼の遺作だ。
②最低映画を決めるゴールデン・ラズベリー賞の記念すべき第1回で3部門ノミネートを果たしている。「最低作品賞」「最低助演男優賞(デヴィッド・セルビー)」「最低脚本賞」