これぞスティーヴン・キングの王道
ジェラルドのゲーム
ブルース・グリーンウッド
キアラ・オーレリア
カレル・ストレイケン
ジェフ・ハワード
一言あらすじ
登場人物紹介
ほのぼの感想&解説
原作はスティーヴン・キングが1992年に発表した長編小説。
映画の配給はNetflix。
※話の展開の順序が少し交差している箇所がありますので悪しからず。
アラバマ州の湖畔にバカンスにやってきた夫妻。
車を走らせている途中に道端に現れた野犬。
家に着くと先ほどの野犬が再び現れる。
お腹が減っているのね、と夫が夕食に用意した神戸ビーフを与える。
人気のない場所のため、施錠しないどころか家の出入り口の扉を開けっ放しにする妻。
そして早くもシーンはベッドルームに切り替わる。
バイアグラを飲み準備する夫。
プレイに及ぶも不調。
もう1錠飲む夫。
新たなプレイを試みるため妻に手錠をする夫。
刺激を求め妻に叫び声を要求する夫。
それに応じるも嫌気がさし手錠を外してほしいと頼む妻。
それを断りプレイを続行しようとする夫。
口論になる夫妻。
突然苦しみだした夫。
薬の効きと急激な興奮が合わさって心臓発作を起こしたのだろう。
そのまま帰らぬ人になりグッタリと妻の上に倒れる夫。
ベッドから落ちた衝撃で頭を打ち血を流す夫。
手錠を解こうと必死になる妻。
ビクともせず焦る妻。
ここから彼女の命を懸けたサバイバルが始まる。
最初の刺客は予想の通り野犬。
家の入口も開けっ放し、寝室の扉も開けっ放し。
開けっ放しプレイかよ。
寝室の扉のすぐ側で倒れ死んでいる夫。
「美味しそうだなぁ。」とペロペロする野犬。
「やめなさい!」と夫を守る妻。
しかし腕を引きちぎり美味しそうに食べる野犬。
そりゃ神戸牛を与えた奥さんが悪いよ。
ワンちゃんは再び神戸牛をくださいな。
とテケテケやってきたら、美味しそうなお肉があるわけですよ。
舌を肥えさせた妻が悪い。
そして次に食べられるのはわ・た・し?と怯える妻。
そして急に蘇る夫。
どうやら錯覚が見えてきたようだ。
妻に対して死を受け入れるよう諭してくる死神的存在だ。
妻に友人はいなく、「君が長いこと留守にしていても気に掛ける人はだれ一人いないさ。」
と余計な一言で絶望にさせる。
それとは逆に自分自身の幻影も出てきて、そちらは生きる方法を提案してくれる女神的存在。
その両者が度々妻に話しかけてくる。
深い眠りに落ちるジェシー。
そして手錠を掛けられた状況が過去のトラウマを思い出させる。
12歳のころ、妻ジェシーは家族旅行で湖畔にある別荘にやってきた。
その日はアメリカでは何十年振りかの皆既日食が見れる日であった。
水辺のベンチに父親と共に座り、ジェシーは日食用メガネで空を眺めていた。
すると父親が、「昔はよく膝の上に座ってくれたよね。今はもう座れないっか。」
と懐かしみつつ切ない表情で娘に話しかける。
するとジェシーは、「まだ座れるよ!」
と父親が大好きなので悲しませたくない思いから膝に座る。
嬉しがる父親。
そこまでなら微笑ましい父娘物語。
しかしこの父親はイカれていた。
何と娘を膝に自慰行為を始めたのだ。
ジェシーは何をしているか察しながらも、恐怖と悲しみでその場を動けず泣き出す。
その後、父は娘を部屋に呼ぶ。
「さっきのことは今すぐお母さんに伝えよう。このまま隠すとお互いにとって良くないことになるから。お父さんは罰を受けるよ。」
自分のしてしまったことを恥じる父。
しかしそんな父を許し、このことはずっと黙ってるからお母さんには話さないでと説得。
そしてその後、父親に手錠を掛けられ…。
ファッツ!?おい親父!!ただの変態じゃないか!!
ちなみに父親役は『E.T.』(1982)で主人公エリオットを演じたヘンリー・トーマス。
純粋な坊やが変態に…。
E.T.に絶縁されちゃうよ。
エリオット、“Beeee Gooood”
そんな過去のトラウマを、ジェシーは今回の衝撃で思い出したのだ。
人間は嫌な記憶を消したがる習性があるので、今まで思い出すこともなかった。
そんな父親と夫の姿が重なったのだ。
そして幻影の夫は嫌味なことを言う。
「父のことがトラウマで、俺と結婚したのも父親に似ていたからだろう?」
眠りから覚めたジェシーが正面に見たのは巨大な怪物だった。
夫の幻影は、この怪物を“死神”だと告げる。
死神を演じるのは『ツイン・ピークス』にも出演しているカレル・ストレイケン。
2017年の続編にも出ています。
死神の側には大きなバッグがあり、骨や小物がたくさん入っていた。
命とともにその人に関する何かを一つ回収するしい。
「これは幻覚だ」と繰り返すとその幻影は消えた。
ジェシーを襲うのは幻覚だけではない。
直接的身体の疲労である。
脱水症状と手首のうっ血。
水のトラブルは自分の幻影がアドバイスをくれる。
近くの棚に水の入ったコップがあった。
軽くピタゴラスイッチをして見事水を確保。
「飲みすぎなさんな、後のために残しておきなさい」と自分の幻影。
次にいよいよ手錠を外す時が来た。
先ほどのコップを割り、破片で右手首を切り、溢れ出す血を滑りにして皮膚を割いて手錠を外す。
べろんべろんになった手首がむごい。
グロ描写に耐性はある程度あるがこれは中々な特殊メイクだ。
左手首の手錠を外すべくベッドを引きずり、夫が洗面所に置いた鍵を血まみれの右手首で取り、さすがにその手では複雑な操作はできないので口に鍵を加え手錠を解く。
ついに解放されたジェシー。
再び現れた“死神”に夫との結婚指輪をプレゼント。
この行為でジェシーが過去の弱い自分と決別したようにとれる。
車でビューっと走らせるも意識が朦朧とし案の定木に激突。
衝撃音をきいた近所の人らが助けてくれて病院へ。
その後彼女はニュースで真夜中に家に現れた死神の正体をテレビで知る。
奴は幻覚ではなく実在したのだ。
そいつは連続殺人鬼だった。
フランケンシュタインの怪物のようなインパクトのある顔面は先端肥大症として報道されている。
彼の裁判に駆け付けたジェシーは彼のそばへ行き一言放つ。
「思ったより小さいわね」
それに対し、家でジェシーと対面した時に彼女が自分に言っていたことを繰り返し(怯えていた彼女をバカにしている)、不敵な笑い声をあげる。
そのタイミングで出てきたか忘れたが、この方がジェシーの足をペロペロしている描写が一瞬だけにもかかわらずインパクト大。
実際は犬にペロペロされていたんですけどね。
裁判時の話に戻す。ペロペロ挟んですみません。
奴は父親へと姿を変えたのだ。
しかしもはやジェシーは動じることはなかったのであった。
あっ何か聞き覚えがあると思ったら、アナキンがグリーヴァス将軍に言ってたなぁ。
そんなことはさて置きこの一言から、ジェシーは自力で手錠を外したことにより過去のトラウマを乗り越えたことがわかる。
彼女は今を強く生き、性的虐待に悩む若者のカウンセラーとして自らの実体験を交えつつ相談に乗るのであった。
トリビア
まとめ
本作で重要になるのが“丸い形のもの”。
劇中で丸いものというと、“手錠”、“皆既日食”、“結婚指輪”の3つ。
まずは“手錠”。
彼女が人生を見つめ直すチャンスを与えてくれたものだ。
施錠されたことにより全ては始まり、彼女はそのチャンスをものにして全ての試練を乗り越える。
手錠から解放されることは、今までの暗い人生から解放されることを意味する。
次に“皆既日食”。
皆既日食は珍しい現象なのだから、そんな日に家族と楽しく過ごしていたら尚更その日のことは忘れないはずである。
しかし父親にあんなことをされたため、ジェシーは記憶を封じ込めた。
今現在の状況が史上最悪だと思っていたジェシーだが、それと同等に最悪なことがあったでしょ、と脳が丸い“皆既日食”を連想させたのだろう。
そして明るい空に輝く太陽を、暗い空を灯す月が覆う。
その2つが重なったとき、形は“手錠”と“指輪”のように丸くなり、辺りは血のように不気味な色に変わる。
これはその後のジェシーの手首を連想させる。
それにしても美しい映像だ。
最後に“指輪”。
前述のとおり、最後に死神に渡したことで夫との決別を意味する。
父親に似ている男性を自然に選んでしまったということは、記憶を封じていても心の中でトラウマとして残っているため完全に消すことはできない。
あの行為には父親との決別も含まれているのだ。
さらに丸いものはないか探したところ、
見落としかけていた原題の“Geraldo’s Game”。
イニシャルが共に“G”。
丸い形をしており、2つで1セットの手錠のように見える。
キングはそれも考えてタイトルを付けたのではなかろうか。
まとめといたしましては、
ジェラルドのゲームとは、ジェシーの人生ゲームなのだ。
②夫が死ぬ。
③幻影が邪魔をする。
④過去のトラウマを思い出す。
⑤脱出。
⑥強くなる。