第2章『スケリグ・ヴィヒール』最後のジェダイが隠居した島

地球紀行
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2019年時点で1121件存在する世界遺産『映画関連付けて1つずつ紹介するコーナー
地球を旅しながら歴史や自然についての知識と理解を深めよう
1972年の第17回ユネスコ総会にて世界遺産条約が採択された。
世界中のさまざまな文化財や自然環境を、人類全体にとって現在だけでなく将来世代にも共通した重要性をもつとされる価値「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」をもつものとして「世界遺産リスト」に記載している。

ケリ
ヴィール

英語名
Skellig Michael
登録国
アイルランド
登録年
1996年
登録区分
文化遺産
登録基準
(iii)文明や時代の証明を示す遺産
(iv)建築技術や科学技術の発展を証明する遺産
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関連映画

Star Wars: The Last Jedi Trailer (Official)

『スターウォーズ/最後のジェダイ』
原題:Star Wars: The Last Jedi
公開:2017年
監督:ライアン・ジョンソン
出演:アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック

歴史

『スケリグ・ヴィヒール』は、アイルランド本島の港から南西の方角に約12km離れた大西洋沖に浮かぶ面積0.18㎢の小さな孤島。

※ここでは英語名のスケリグ・マイケル(Skellig Michael)ではなく、アイルランド語のスケリグ・ヴィヒール(Sceilig Mhichíl)の方で呼ぶ。

島そのものが高さ200mほどの切り立った岩山である。

天候のいい日にはアイルランド本島からもこの島が見える。

現在この島には人は住んでおらず、ニシツノメドリなど海鳥の繁殖地となっている。

この鳥と島を見て思い出すのは、

やはり2017年に公開された『スターウォーズ/最後のジェダイ』

ジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーが身を隠していた島だ。

実際にこのスケリグ・ヴィヒールで撮影されている。

そして本作から新しく登場したキャラクターがいる。

泣き声と可愛らしい顔が特徴的な鳥であるポーグだ。

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この島全体に何千匹と棲息している(おそらく)固有種だ。

チューバッカはそんな希少な動物を戸惑いながらも丸焼きにしてしまった。

というよりもルークが普段食べていたから、彼がみんなに御馳走したように考えられる。

そんなポーグのモデルになったニシツノメドリは、欧米ではパフィン(Puffin)と呼ばれる。

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ヨーロッパでは主に北部、フェロー諸島、アイスランドに棲息している。

アイスランドでは、パフィンはジビエ(狩猟)料理としてチューバッカのように食べる文化が根付いている。

スケリグ・ヴィヒールに住むその他の鳥をご紹介。

※写真は現地で撮られたものではありません。

キョクアジサシ(Arctic Tern)

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ハジロウミバト(Black Guillemot)

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セグロカモメ(Herring Gull)

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オオハシウミガラス(Razorbill)

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フルマカモメ(Fulmar)

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マンクスミズナギドリ(Manx Shearwater)

出典:Pixabay(イメージ画像)

ウミウ(Cormorant)

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シロカツオドリ(Gannet)は、アイルランドで最も大きい海鳥。

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スケリグ・ヴィヒールには70,000羽ほどが住んでおり、これは世界で2番目に数の多い棲息地である。

『スターウォーズ/最後のジェダイ』にて、この島がある惑星はオク=トーと呼ばれている。

表面の大部分が海に覆われた水の惑星だ。

そこにいくつもの島が点在する。

その一つにジェダイ・オーダーによって築かれた最初のジェダイ寺院が存在したのだ。

その島には数千年以上にわたってラナイという鳥類の知覚種族が住んでいる。

女性の仕事は、「ケアテイカー」と呼ばれるジェダイ・オーダーにより築かれた遺跡を維持管理することである。

一方男性は、「ビジター」と呼ばれるハンター兼採集者として海で過ごす。

彼らはを主食とし、ポーグは遠い親戚にあたるので食べない。

スケリグ・ヴィヒールに文明が築かれたのは7世紀

キリスト教の修道士が俗世を捨て禁欲を追求するための修行の場として開拓した。

いったい彼らはなぜこの島を選んだのだろうか。

スケリグ・ヴィヒールには「聖ミカエルの岩山」という意味があり、キリスト教徒にとってそびえ立つ岩山は、大天使ミカエルが降臨する場所として信仰されてきた。

それだけではなく、キリスト教がアイルランドに伝来する以前、

アイルランドにはケルト人が住んでいた。

彼らは自然を崇め、岩に神聖な力が宿っていると信じた。

5世紀にアイルラインドにキリスト教が伝来し、布教の拠点として各地に修道院が建てられるようになると、ケルト文化がキリスト教に取り入れられて独特のケルト修道院文化が生まれた。

ケルトの信仰とキリスト教がアイルランドで結びついた証として、アイルランド本島にある石造りのケルト十字架には、十字のクロスした部分に太陽を象徴する円環が組み合わされている。

これは石に対する崇拝太陽信仰の現れを意味する。

さらにこのケルト十字架にはケルト独特の渦巻き文様が刻まれている。

この渦巻きは「魂の再生」のシンボルで、ケルト人は西の彼方「死者が永遠に生き続ける再生の島がある」と信じていた。

それが、西の果ての海に浮かぶスケリグ・ヴィヒールだった。

そうしたケルトの信仰もあって、修道士はスケリグ・ヴィヒールを目指し、「魂の救済」を願い修行と祈りの日々を過ごした。

彼らは12世紀頃までこの島で暮らしたという。

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今現在、頂上付近の断崖にある遺跡はその時に造られた建物の跡である。

かつて修道士たちは、手漕ぎの船でこの島に渡っていた。

そして海岸から山頂まで何百段もの階段を作り、修道院を完成させるまでには数百年かかったと考えられている。

島は主に砂岩で出来ており、土壌が薄く木は全く育たないため木材を手に入れることが不可能であった。

その一方で島全体には豊富な石材があったため、その石を積み上げるだけで修道院を造っていた。

といっても雨と風を凌ぐ頑丈な造りである。

その他にも石垣貯水槽などの施設を同様に造り上げた。

島の修道院跡には、そこで一生を終えた修道士の墓が残っており、石造りの十字架が立っている。

修業した礼拝堂などのドーム状の建築様式は、アイルランドに紀元前から伝わっているものであった。

修道士たちの食事だが、『スターウォーズ』のようにポーグは食べず、朝早くに起きて670段の階段を下り、を獲りに行くのが日課だったという。

『最後のジェダイ』に登場する種族ラナイは、まさにこの修道士をモデルに造形されたキャラクターであることがわかる。

現在では映画の影響で観光客が増えたが、島への観光船の数も乗船人数も制限されている。

上陸が許可されているのは、比較的海が穏やかな5月から9月の間に限られ、その期間内でも海が荒れると船が欠航することがあるという。

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