第1章『イエローストーン国立公園』地球を壊滅させる力を持つ地底火山

地球紀行
出典:Pixabay

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2019年時点で1121件存在する世界遺産『映画関連付けて1つずつ紹介するコーナー
地球を旅しながら歴史や自然についての知識と理解を深めよう
1972年の第17回ユネスコ総会にて世界遺産条約が採択された。
世界中のさまざまな文化財や自然環境を、人類全体にとって現在だけでなく将来世代にも共通した重要性をもつとされる価値「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」をもつものとして「世界遺産リスト」に記載している。

イエローストーン
国立公園

英語名
Yellowstone National Park
登録国
アメリカ合衆国
登録区分
自然遺産
登録年
1978年
登録基準
(vii)自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産
(viii)地球の歴史の主要段階を証明する遺産
(ix)動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す遺産
(x)絶滅危惧種の生息域で、生物多様性を示す遺産
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関連映画

『2012』
原題:2012
公開:2009年
監督:ローランド・エメリッヒ
主演: ジョン・キューザック

2012 Trailer #2

『ドナルドの少年団長』
原題:Good Scouts
公開:1938年
監督:ジャック・キング

『レヴェナント: 蘇えりし者』
原題:The Revenant
公開:2015年
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
主演:レオナルド・ディカプリオ

The Revenant | Official Teaser Trailer [HD] | 20th Century FOX

歴史

1978年に記載された最初の世界遺産12件のうちの1つであり、1872年世界初の国立公園として設立された。

1807年の冬、猟師のジョン・コルターがロッキー山脈に足を踏み入れ、イエローストーン川上流からこの地帯を発見した。

1万か所以上で間欠泉などの地熱活動が見られる。

約9,000k㎡の広さを誇る敷地内には地球上の約半分の温泉と約3分の2もの間欠泉がある。

イエローストーン国立公園といえば『グランド・プリズマティック・スプリング』

直径約113メートルある熱水泉は全米最大の大きさで、世界でも第3位の大きさ。

温度は70度ほどで常に熱いお湯が湧き出ている。

最も有名な間欠泉はオールドフェイスフル

1時間おきに約2万ℓの熱水を50m噴き上げる。

間欠泉の原動力は地下5,000mにある巨大なマグマだまり。

マグマの圧力は100万年感覚で限界に達し噴火を起こす。

約200万年前120万年前に大規模な噴火が発生した。

64万年前の爆発は、1980年5月18日に起きたワシントン州にあるセント・へレンズ山噴火の1000倍の規模。

山々は砕け散り、吐き出された大量の火山灰が米国の半分を覆った。

この最後の噴火時に地面がドーム状に隆起。

そしてこのときにできた地表の裂け目からマグマが噴出し、公園中心部に巨大なカルデラ(火山の噴火などで中央のマグマ部分が空洞化し陥落してできた窪地形)が形成された。

現在も地下のマグマ活動は活発で、地表の割れ目から染み込んだ雨水を急速に熱し、再び地表へと送り出している。

『マンモス・ホットスプリングス』というエリアでは、地底から湧き出した温泉の石灰分が長い間かけて幾重にも積み重なり、棚田のような風景が見られる。

100万年感覚で噴火しているとはいえ、次にいつ大噴火を起こすかは定かではない。

2009年に公開された『2012』ではイエローストーン国立公園大噴火が見られる。

2012 (2009) – Yellowstone Erupts Scene (4/10) | Movieclips

 イエローストーン公園の地中にある火山は世界を十分壊滅させうるエネルギーを持っている。
一旦噴火すると、噴出した溶岩だけで米国本土の半分以上を覆う。
噴火後に降る火山灰も地球全体に影響をおよぼし、植物は酸性雨などの被害を受けてほとんどが姿を消す。
このような状況下で人類は壊滅に向かう。
イギリスの科学者がコンピュータでシミュレーションを行ったところ、もしイエローストーン公園のスーパー火山が噴火したら、3、4日内に大量の火山灰がヨーロッパ大陸に着き、米国の75%の土地の環境が変わり、火山から1,000キロ以内に住む9割の人がその災難から逃れることができず、吸い込んだ火山灰が肺で固まるため、窒息死するという。
しかも、火山灰が空中に漂うことで地球の年平均気温は10度下がり、北極は12度下がる。
このような寒冷気候は6年から10年間続く。
(引用:The Epoch Times)

間欠泉は位置を変えていき、グロットガイザーと呼ばれる間欠泉を囲むのは水のミネラル分を浴びて石化した木。

熱湯は木の根を傷め木を枯らしてしまう。

それが森の拡大を止め草原を生み出す。

ここに住むアメリカンバイソン(american bison)はそれを食糧としている。

出典:Pixabay

※動物の写真は現地で撮られたものとは限りません
イエローストーンは11月に本格的な冬を迎える。

それから半年間は冬が続く。

過去に氷点下54度を記録したことがあるが、実際にはさらに寒くなる。

ちなみに北極点の年間平均気温は-34℃、南極点の平均気温は-49.5℃2018年には南極で史上最低気温である-97.8℃に達した。

これは人間が数回呼吸しただけで肺から出血して即死するほどの気温。

気温は南極で太陽が昇らない時期に衛星から測定されている。

この時期にはオオカミコヨーテキツネワピチ(wapiti:別名アメリカアカシカ)アメリカンバイソンカワウソ(otter)などが活動している。

広大な雪原の中で食糧にありつくのは容易ではない。

地上ではその中でも肉食動物のオオカミが猛威を振るう。

冬が終わり、春の訪れがやってくるのは4月頃

冬眠を終えたクマが姿を現す。

ディズニーキャラクターの中にはそんなクマに襲われたものもいる。

イエローストーン国立公園にやってきたドナルドと彼の甥っこヒューイ、デューイ、ルーイ。

1938年公開の『ドナルドの少年団長』

ドナルドは甥っ子たちにキャンプの方法を指導する。

しかし彼らはふざけてドナルドにいたずらを仕掛ける。

いつものように叔父と甥っ子の陽気な追いかけっこが始まる。

終盤では持参してきたハチミツがドナルドにぶっかかり、その匂いに誘われたクマが彼を襲おうとして命がけの追いかけっこが始まる。

最終的に間欠泉にハマったドナルドが噴射によって勢いよく飛ばされる。

クマにとって飛べないアヒルなど朝飯前だ。

そんなところに子供を連れて行きキャンプを試みるなんて無謀すぎる。

クマと闘った男といえば『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)を忘れてはならない。

アメリカ西部開拓時代に実在した探検家ヒュー・グラスの体験記を脚色して映画化された。

彼は1823年に毛皮会社の請負で探検隊と共に毛皮の収穫の遠征に出た。

グラスはパーキンス郡グランド川支流の近くで食糧にする獲物を探していると、子連れのハイイログマに出くわしてしまった。

襲われて重傷を負ったグラスを見た隊長は「命を落とす」と判断。

その場に、死を見届けてから埋葬する者として二人を残し探検隊は去った。

そしてその若者二人はグラスを放置して、本隊に追いついた。

彼らは隊長に「グラスは死んだ」と嘘の報告をした。

グラスは意識を取り戻したものの、武器と装備品は盗まれていた。

片足を骨折しながらも歩き続け、草の実と根を食べて飢えをしのぎ、時にはバイソンの生肉を食ったという。

そして長旅を終え傷が治ったころに置き去りにした二人に復讐しに行くのであった。

撮影はカナダ、アルゼンチン、メキシコで行われている。

グラスを演じたレオナルド・ディカプリオは実際にバイソンの生肉を食い、動物の死体の中で眠るなど熱演をして見事初のオスカーを受賞した。

イエローストーン国立公園とは直接関わりはないが、周辺が舞台なので、極寒や自然風景などの似たような雰囲気は味わえる。

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暖かくなったイエローストーンの渓谷にはワピチプロングホーンなどの草食動物の群れができる。

出典:Pixabay(ワピチ)

夏に向けて高原の中央へと移動するためだ。

プロングホーン時速70km以上の速度を維持しつつ長距離を走ることができるため、長距離ではチーターを超し、世界一長距離の早い動物である。

出典:Pixabay

冬には猛威を振るったオオカミだが、夏には目立たなくなる。

他のオオカミの群れから離れ、それぞれ洞窟で子育てをする。

このイエローストーンに住むオオカミだが、実は約80年前に人が絶滅させている。

牧場主にとっては出くわすと危険だからである。

長年の議論の末、政府が自然のバランスを戻すため1995年オオカミを再導入した。

だがオオカミの数は増えた。

そして新たな縄張りと獲物を求め、彼らは公園の外へ。

家畜が襲われた場合、射殺は許可されている。

しかし再導入後は殺すのではなく、オオカミに発信機を付け、牧場に近づいて来たことがわかった場合は銃を鳴らし追い払う。

では実際に自然のバランスは取り戻されたのか。

イエローストーンにはビーバー(beaver)が住んでいる。

しかしそれは最近のことで、国立公園の指定当時は毛皮目当ての乱獲で絶滅寸前だった。

再び姿を現したのは1995年

オオカミが戻った年である。

ビーバーは池の周囲の若いヤナギの枝でダムを作る。

オオカミに追われることでワピチの食事の時間が減り、ヤナギの木が増えたのだ。

現在では、冬が近づくと国立公園のあちこちでヤナギでダムを作るビーバーの姿が見られる。

それぞれのダムが新たな生命を育み、この地の豊かな自然を支える。

渓谷とは異なり、夏の間もイエローストーンを囲む山々には雪が積もっている。

太陽が雲に隠れると山の冷気が下りてきて辺りは寒さに逆戻りする。

そのため雪は季節問わずに降ることになる。

野生動物にとってさらなる試練がある。

乾燥して燃えやすくなっている大地に落雷があると一気に燃え上がってしまうのだ。

1988年の夏には森の3分の1が焼失した。

しかし燃え尽きても大地に存在する灰が養分となり、日光も地面に届くようになるため再び草が生い茂る。

イエローストーンは不滅。

イエローストーン国立公園では「wilderness(手つかずの自然)」という概念をもとに、

人間の手を極力入れないことで本来の生態系を維持している貴重な世界遺産である。

参照:くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト, BBC制作『イエローストーン 最古の自然遺産』, Forbes JAPAN, 世界遺産オンラインガイド

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