~伝説のビーチを目指す旅~
2018年3月19日
5日目 Part2
伝説のビーチ
“伝説のビーチ”を探し求めて友人と共に旅に出た男の物語である。
やばい!携帯落とした!
彼が首にかけていたピピ島で買った携帯の入った防水ケースのストラップが、ちぎれて海底まで沈んでいったらしい。
焦る友人を見兼ねて我らの船長が服を脱ぎ、ゴーグルを装着した。
そして飛び込んだ。
2人がかりで探しても見つからない。
というより船長の様子もおかしい。
絶対に泳ぎ慣れていない感じの動きで激しく水しぶきを上げる。
正直なところ船長は心配ですが、焦っている友人を見ていると笑いが込み上げてくる。
それを隠して私の水中ゴーグルを友人に貸して見守る。
潜って5秒ほど。
勢いよく笑顔で出てきた友人。
彼によると携帯が沈む先はそこまで深くなかったそう。
私もポンコツですが、友人もポンコツですね。
ポンコツ2人旅は不安ばかり。
やばい、溺れそう、タスケテ。
死の危機に直面しているというのに、プライドが邪魔したせいで必死に出たその一言には説得力がなかった。
そのため友人は私が冗談で言っているのだろうと思ったという。
オオカミ少年はこうして最期を迎える。
普段からの生活を改めようと身に染みたがもう遅いかもしれない。
あの世での生活を楽しもう。
嗚呼、こんな綺麗な海で逝けるのならそれも悪くない。
いや!死んでたまるか!!!
我を取り戻した私は近くのボートに辿り着くため、力の入らない足を必死にばたつかせ始めた。
まるで『タイタニック』(1997)のローズ。
しかしながら陸までは遠すぎる。
辺りを見渡し目に入ったのは我々の船よりも近くに浮いていた別の船。
最後の力を振り絞ってそこに向かおうとするも、もはやその力は使い果たしていた。
手前で沈みかけるも、なんとか手を使って浮く私。
ここで奇跡が起きる。
新たに目に入ったのは一人の人間。
もうダメだ。
プライドも恥もこの海に流せばいい。
私はその人の背中にいきなりしがみついた。
その人はライフジャケットをしていた。
その時出た最期の言葉は…
Help me…
この人は女性だった。
若いアメリカ人だろうか?
美女だった。
私は死にかけなのでもう気にすることはない。
このセイントウーマンは近くにいたボーイフレンドと思われる人に助けを求めた。
この人、溺れてる!助けなきゃ!
私の目にもそのボーイフレンドが映った。
サングラスをかけた中々の筋肉質な男が、浮き輪をしてぷかぷかと優雅に浮かびながら携帯をいじってニコニコしていた。
未だに忘れないぜ、君の姿を。
君は必死な彼女を放置したんだ。
君は一切こっちを見なかったんだよ。
セイントウーマンよ、あなたはアイツと別れるべきだ。
そしてエンジェルは私を背に乗せて近くの船まで導いてくれた。
お礼を何度も言った。
命の恩人、感謝永遠に。
他船のライフジャケットを借りた私はフェニックスとして生まれ変わり、再び泳ぎ始め、いや安心して浮かぶことができた。
海は怖いよ。
過剰な自信は時に死を招く。
勇敢なる女神にコップンカッ。
絶景。
まさに映画で見た世界。
なんと今年の6~9月までピピ島が閉鎖されることに。
理由は観光客が増えたせいで環境破壊が進んだため。
閉鎖期間で保護活動を行うとのこと。
そして再開後も観光客の数を制限するらしい。
なんとピーク時にはあの小さな島に1日4,000人もの観光客が訪れている。
さらに10月。
環境保護活動に時間がかかり、無期限で閉鎖されることが決まった。
アソコニイクニハ40B(≒136円)カカルヨーン
追加料金?聞いてないけれど安いからいっかー
友人はタイバーツの持ち分が無くなり、そのお金すら持ち合わせていなかった。
あらやだ、立て替えておくから後で返してちょーだい
私は船長に40Bを差し出した。
ノンノンノン!フォー!ハンドゥレッドゥバーツだよーん!
あらやだ、0が一つ多かったのね。
まぁ二人で400B(≒1,360円)でも安いからいいでしょう。
再び財布をチェックした。
あらやだ。
あるのは100B(≒340円)と日本円1万円札のみ。
ここでツアー後に換金してから渡すことも考えたのだが、それはリスクがあるため避けたい。
オーキャプテン!
マイキャプテン!
あらやだマイキャプテン!
そのためこの遠くから撮った写真のみ!
これにて『伝説のビーチを目指す旅』終了です!
写真に撮るとまるでメラメラの実の能力者の集まり。